映画『8番出口』が"ホラー"なのに異例ヒットの理由。興収初速は『国宝』超え!原作ゲームは「脱出ホラー系の怪作」。何が観客の心を掴むのか?

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30〜40代であれば、地下通路の無限ループに迷い込む主人公の境遇に自身を重ねて感情移入する人も少なくないだろう。その上の年代であれば、彼の身の回りで起こることを客観視し、地下通路での彼の変化に人生そのものの縮図を見るかもしれない。

一方、子どもたちにとっては、繰り返し現れるおじさん(歩く男)が怖いホラー映画だったり、突然起こる通路の異変を探して楽しむアトラクション的な映画になるだろう。

仲間同士の話のネタやSNSの話題を探す若い世代は、王道の古典的ホラー『シャイニング』のオマージュや、名作『2001年宇宙の旅』のHALのような神となる存在の投影などの発見や考察を楽しむだろう。

なかには、地下空間そのものに、マウリッツ・エッシャーのだまし絵や、ダンテ・アリギエーリの戯曲『神曲 煉獄篇』の要素を感じて、自分への問いかけとして捉える観客もいるかもしれない。

本作には、世代や属性を問わない、観る人それぞれにとっての楽しみ方がある重層的な構造がある。それが幅広い層を取り込む引力になっている。

小松菜奈
ある女を演じた小松菜奈(C)2025 映画「8番出口」製作委員会

物語後半、主人公が危機に陥るシーンに注目

同時に、本作には社会へのメッセージも埋め込まれている。

物語の後半に、主人公が危機的な状況を迎えるシーンがある。壊滅的な大異変に襲われる主人公の姿に観客は衝撃を受けるに違いない。しかし、そのあまりのインパクトをよそに、そこからすぐに何事もなかったかのように物語は進んでいく。

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