胃のない動物がいる一方で、ウシは4つの胃をもちます。大きな胃と関連して、ウシには創傷性心膜炎(そうしょうせいしんまくえん)という特有の心臓の病気があります。
ウシはのんびりマイペースで、常に草を食んでいるイメージがありますよね。ウシはあの大きな体を維持するために、大量に草を食べなければなりません。そして牧草や飼料の中に、釘や針金といった金属が混ざっていた場合、それらの異物も食べてしまうことがあります。
先端の尖った金属が胃に入ると、胃と横隔膜を突き破って、心臓の表面をおおっている心膜まで刺さってしまうことがあるのです。
ウシに磁石を飲み込ませるワケ
創傷性心膜炎では、釘などの金属によって胃にあいた穴から心臓までがつながり、胃の中にいた細菌が、通常は無菌状態であるはずの心膜まで波及するので、心膜に強い炎症反応が起こります。創傷性心膜炎はウシにとって怖い病気で、発症すると手の施しようがないことも多く、死亡率が高い病気です。
この病気を予防するために、ウシに強力な磁石を飲み込ませることがあります。胃の中に入ってしまった金属異物を磁石にくっつけることで、胃や心臓を傷つけるのを防いでいるのです。
心膜に炎症が起こると、炎症に伴って出てきた線維素(出血が起きたときに血液を固める役割を果たす物質)が、心膜に大量に付着します。この見た目がバターを塗りつけたパンのように見えることから、専門家の間では「バター付きパン病変」と表現します。
この病気はほんの一例で、ウシやブタにはさまざまな病気がありますが、ウシやブタといった産業動物が病気になると、動物自身が病気で苦しむだけでなく、お肉や牛乳をつくることができなくなるので、私たちの食卓にまで影響が及んでしまうこともあります。
獣医療業界では、産業動物の獣医師が足りないといわれ続けてずいぶん経ちます。
しかし、産業動物の獣医師は、産業動物の病気の予防や治療を通して、私たちが生きていくうえで大切な食べ物の安全を守っているとともに、畜産農家の経営も支えている、とてもやりがいのある獣医師の職域の1つです。
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