医療AI普及でも…「生きのこれる医師」が行う診療のかたち――専門家が指摘するAIが使えない診療科・診療分野2つ

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もちろんこれを服用したところで何かが変わることはなく、見方によっては偽薬(プラセボ薬)に近いとさえいえますが、それでも患者さんの側は「薬を処方してもらえた」という事実に納得して安心感を得られて、結果として次の日から元気に暮らせる、ということが往々にしてあるのです。

これは精神科外来でも見られる風景です。

悩みを抱えている若者が抗うつ剤を処方してほしいと来院したものの、医師から見ればその若者が処方を要するレベルの症状であるとは考えられず、安易に抗うつ剤などを処方して活動に制限が起こることを避けたい、というケースが多々あります。

そうした場合も、状況によっては、偽薬を処方して様子を見ることがあります。

患者の本質を見抜けるのは人間

ガイドラインにも、医師が病気でないと診断した場合、投薬はしなくてもかまわないが、ほかの方法で患者さんの精神面のバックアップはしたほうがよいと書かれています。

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プラセボ薬処方でこの精神面のバックアップを行えるのは、経験を積んだ人間の医師が、患者さんの抱える問題の本質を見抜くからこそできる一種の裏技であって、これもAIにはできません。

何の効能もない文字通りの偽薬であれば、わりと簡単に買えます。「プラセボ薬」「偽薬」などと検索すると、麦芽糖を主原料とする有効成分ゼロ、有害成分もゼロで外見は医師が処方する薬にそっくりな偽薬が、30錠1000円程度で売られているのです。

偽薬は映画やドラマの撮影などで使われることもあるようですが、認知症患者を介護する家族が買い求めることも多いようです。

認知症の家族が薬を飲んだことを忘れて、同じ薬を1日に何度も飲みたがるような場合にこうした偽薬を与え、納得してもらうというような使い方です。

奥 真也 医療未来学者・医師

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おく しんや / Shinya Oku

1962年大阪府生まれ。医療未来学者、医師、医学博士。経営学修士(MBA)。大阪府立北野高校、東京大学医学部医学科卒。英レスター大学経営大学院修了。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス国立医学研究所に留学、会津大学先端情報科学研究センター教授などを務める。その後、製薬会社、医療機器メーカーなどに勤務。著書に『未来の医療年表』(講談社現代新書)、『医療貧国ニッポン』 (PHP新書)、『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』(晶文社)、共著に『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)がある。

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