もちろんこれを服用したところで何かが変わることはなく、見方によっては偽薬(プラセボ薬)に近いとさえいえますが、それでも患者さんの側は「薬を処方してもらえた」という事実に納得して安心感を得られて、結果として次の日から元気に暮らせる、ということが往々にしてあるのです。
これは精神科外来でも見られる風景です。
悩みを抱えている若者が抗うつ剤を処方してほしいと来院したものの、医師から見ればその若者が処方を要するレベルの症状であるとは考えられず、安易に抗うつ剤などを処方して活動に制限が起こることを避けたい、というケースが多々あります。
そうした場合も、状況によっては、偽薬を処方して様子を見ることがあります。
患者の本質を見抜けるのは人間
ガイドラインにも、医師が病気でないと診断した場合、投薬はしなくてもかまわないが、ほかの方法で患者さんの精神面のバックアップはしたほうがよいと書かれています。
プラセボ薬処方でこの精神面のバックアップを行えるのは、経験を積んだ人間の医師が、患者さんの抱える問題の本質を見抜くからこそできる一種の裏技であって、これもAIにはできません。
何の効能もない文字通りの偽薬であれば、わりと簡単に買えます。「プラセボ薬」「偽薬」などと検索すると、麦芽糖を主原料とする有効成分ゼロ、有害成分もゼロで外見は医師が処方する薬にそっくりな偽薬が、30錠1000円程度で売られているのです。
偽薬は映画やドラマの撮影などで使われることもあるようですが、認知症患者を介護する家族が買い求めることも多いようです。
認知症の家族が薬を飲んだことを忘れて、同じ薬を1日に何度も飲みたがるような場合にこうした偽薬を与え、納得してもらうというような使い方です。
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