「名医」も「ヤブ医者」も駆逐する"医療AI"のリアル――経験と勘に頼るこれまでの医療現場の常識が不要となる時代到来も

「名医」という概念は、AIの台頭によって変化を余儀なくされます(写真:Ushico/PIXTA)
名医もヤブ医者も、AIの前では意味を失う──。
診断・治療から介護の現場まで、AIが深く入り込む時代が迫っています。人間にしかできない「寄り添い」や「対話」は残りながらも、人工知能はすでに人間の経験や勘を凌駕しつつあります。AIが医療と介護の未来に、そして究極的には「人間という存在」そのものに、どのような変革をもたらすのか。
ベストセラー『未来の医療年表』の著者、奥真也氏による新刊『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』より一部抜粋・編集してお伝えします。
もう「名医」はいらない
そもそも、「名医」とはどういう医師のことだと思いますか?
こう質問すると、おそらくかなりの割合の人が、医療ドラマに登場するような、膨大な医療知識に加えて、独特のひらめきや観察力を武器に診断を行う医師、あるいは「神の手」と評される天才的な外科手術のテクニックを持つ医師をイメージするのではないかと思います。
少し前にヒットした医療ドラマに『グッド・ドクター』という作品がありました。このドラマの主人公に設定されたのは、一度読んだ医学書はすべて暗記してしまう驚異的な記憶力を持ち、また鋭敏な観察力も持つサヴァン症候群(発達障害に伴って現れる、特定分野に突出した能力を持つ症状)の青年医師でした。
この主人公が患者と対峙すると、同僚医師たちは気づかない病変にいち早く気づき、彼の頭脳にインプットされている膨大な医学知識のなかからベストの治療法を選択して治療してしまうのでした。
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