「名医」も「ヤブ医者」も駆逐する"医療AI"のリアル――経験と勘に頼るこれまでの医療現場の常識が不要となる時代到来も

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実際に、これらのAIによって医師の記録業務は大幅に軽減され、患者さんとの対話に集中できる環境が整いつつあります。

アメリカやカナダでもTaliやHeidiなどの診療内容記載AIが導入され、医師の作業時間を半減以下に抑えた事例が報告されています。

介護領域でも記録の自動化は進んでいます。例としてCareViewerが、北欧の健康予測AIと連携した介護記録、健康状態可視化機能を備え、2024年10月から実証実験を開始しています。

放射線科や皮膚科の画像診断だけでなく、従来は内科や外来診療などの「対話が中心だからAIには無理」と信じられていた診察領域でも、いやそこだからこそ、AIが日常業務に深く入り込む時代が到来しています。

問診ロボットと患者のChatGPTが会話

音声認識からサマリー生成までの作業がAIで担えるようになれば、医師は患者さんとの対話に集中できるようになり、診療の質と効率の両方が向上する可能性があります。

外科でも、手術部位の切除範囲などがガイドラインで標準化されていて、「経験」に加えて「適応判断」が重要になりつつあります。

あえて極論をいえば、コンピューターを使いこなせて、目の前の患者さんに対応するのがどの病気のガイドラインであるかという適応性を判断する能力(もっとも、この第一歩の判断が意外とハードルが高く、そのせいでガイドラインを使いこなせない医師がいるくらいなのですが……)があれば、医師ではなくほかの医療従事者でも、あるいは一般の方でも、診断もどきはできてしまうのです。

その意味ではAIが入ってくる以前にすでに、ガイドラインが登場した20世紀末の時点で、医療の質が個々の医師の能力に依存する時代は脱しつつありました。AI医療はこれをマッハに加速します。

AI時代の医療は、名医の直感よりも、素直にガイドラインを使いこなせる誠実さが重要になっていくのです。もう何年かしたら、名医不在の状況が極まって、医療モノのフィクション作品自体が成立しづらくなるかもしれません。

診察室では、医師による診断の前に、白い小さな「問診ロボット」が声をかけてきます。

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