インドの安宿で受け取った「薬」がよく効いた理由。出会ったばかりの韓国青年はなぜ大事な薬をくれたのか? 分断の時代に思い出す「旅の1コマ」

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韓国の青年との交流を描いたイラスト
初めての海外旅行で訪れたインド。病気で寝込んでいた筆者に韓国人青年が持ってきてくれたものとは?(イラスト:堀江 篤史)
たった1人との会話が、世界の見え方を変えることがあるーー。今回から始まる連載「80億分の1コマ」はノンフィクションライター・泉秀一さんが旅先で出会った人々とのワンシーンを切り取り、そこで得た気づきを深掘りしていくシリーズです。

小さな1コマから見えてくるのは、地域や国の課題であり、豊かさの定義であり、人が生きることの本質。「80億分の1の人生」が持つ視点から、カジュアルに社会を見つめます。

病に倒れたインドで受け取った温かさ

NewsPicksの編集長を退任して約1年半前にフリーランスのライターとなり、勝手気ままに旅をしながら文章を書いたりPodcastを配信したりするようになった。経済メディアからキャリアをスタートしてきた自分が、まさか旅を仕事の一部にするとは思っていなかった。その元を辿ると、20歳の時、初めての海外旅で経験したある親切に行き着く。

20歳、初めての海外旅行。行き先はインドだった。ヒンドゥー教の聖地・バラナシで、私は見事に体調を崩した。前日、ガンジス川に潜ったのが悪かったのだろうか、とにかく腹を下し、高熱が出て、安宿のベッドで動けなくなった。

ガンジス川の沐浴場
ガンジス川の沐浴場(写真:skipinof / PIXTA)

バラナシの安宿には、世界中からバックパッカーが集まる。帳場の横には大抵、簡易的なソファが置かれた懇談スペースがあり、宿泊者たちはそこで情報交換をしながら時間を潰す。1泊500円ほどの宿に、若者たちがひしめき合っていた。私が体調を崩したという噂は、あっという間に宿中に広まった。そして翌朝、部屋のドアがノックされた。

80億分の一コマ
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