「名医」も「ヤブ医者」も駆逐する"医療AI"のリアル――経験と勘に頼るこれまでの医療現場の常識が不要となる時代到来も

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「どうぞ、おかけください。最近の体調について気になることを自由にお話しください」

少し戸惑いながら、「いや、まあ……なんか熱が出て……」と話し始めると、ロボットが間髪を入れず反応します。

「発熱が主な症状ということですね? ほかにも気になることがあれば教えてください」

さらに、「一番困ってるのは、あさって次女のピアノの発表会があることです。どうしても行きたくて」と続けると、その場で静かにスマホが反応を始めます。患者さん自身のChatGPTアプリが、音声をもとに自動的に情報を整理してまとめるのです。

ChatGPTによる「問診要約」の一例

4日前の夜7時ごろ、急に38.7℃の発熱。休んでも治らず、近所の薬局で買った解熱剤で一時的に下げたが、その後も平均37.7℃前後が続き、今朝からまた上昇傾向。水分摂取量は24時間で750mlと少なめで、お通じは2日間なし。次女のピアノ発表会に出席したいと強く希望。

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その後、「吐き気はありますか?」「めまいは?」と、ロボットはスマホを通じて追加の確認を行い、会話の文脈を理解したうえで、情報を構造化し、記録します。

「問診完了しました」と告げられると同時に奥の扉が開き、医師が登場。

「こんにちは。いまの問診内容、拝見しました」とカルテ画面をさっと確認し、そのまま会話に入ります。

この診察室には、患者さん、医師、問診ロボット、そしてChatGPTという「4人の参加者」が存在します。患者さんの言葉にならない不安や、うまく整理できない情報も、AIが橋渡しをしてくれる。そこでは、患者さんが検査データなどをどう扱うかが重要です。

糖尿病や高血圧の患者さんが日々の検査データをひとまず入力し、すべてを医師に説明する代わりにChatGPTに要点を説明してもらったり、医療にまだ慣れないがん患者さんが、プリントアウトを受け取るたびに入力したり。

こうした生成AIの利用は、一般の方が使ってこそ意味があり、うまく活用すれば診療の質を劇的に向上させます。

奥 真也 医療未来学者・医師

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おく しんや / Shinya Oku

1962年大阪府生まれ。医療未来学者、医師、医学博士。経営学修士(MBA)。大阪府立北野高校、東京大学医学部医学科卒。英レスター大学経営大学院修了。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス国立医学研究所に留学、会津大学先端情報科学研究センター教授などを務める。その後、製薬会社、医療機器メーカーなどに勤務。著書に『未来の医療年表』(講談社現代新書)、『医療貧国ニッポン』 (PHP新書)、『人は死ねない 超長寿時代に向けた20の視点』(晶文社)、共著に『死に方のダンドリ』(ポプラ新書)がある。

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