「個人の権利」と「社会の利益」、この2つがぶつかったらどちら選ぶか?そして、あなたが当事者ならどうするか?という究極のジレンマ

✎ 1 ✎ 2 ✎ 3
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
全人類の教養大全1
(画像:『全人類の教養大全1』より)

ところが、全体の利益と個人の権利のなかでなにを優先するのかという基準で考えたとき、このような答えには一貫性がないと著者は指摘する。この2つの例は構造的に違いはなく、以下の3つのなかから1つを選ばなければならないというのである。

(1) 全体の利益を優先する:A市と患者を守るべき
(2) 個人の権利を優先する:B村とZさんを守るべき
(3) 2つの例が論理的に同じ構造ではないという根拠を示す
(283〜284ページより)

まず、(3)は不可能だろう。程度の差はあるにせよ、2つの例は全体の利益のために人為的介入をするのだから、個人の権利を侵害しているという点では同じなのだ。つまり(1)か(2)しか選べないわけで、(1)のような立場を集団主義、(2)のような立場を個人主義というわけである。

どちらかが絶対的に間違っていて、どちらかが絶対的に正しいというのであれば選択は難しくない。しかし現実問題として、そのような「絶対」は存在しない。だからこそ、「なにを優先するべきか?」という問題についての答えが出ることはないのだ。

知的好奇心が刺激される

このように、本書ではさまざまな事例を用いながら教養や人文学についての解説がなされていく。文体も軽妙なので読みやすく、なにより知的好奇心をぐいぐいと刺激してくれるような心地よさがある。これは純粋な感想だ。

次回は続く2巻のなかから、また興味深いエピソードをご紹介したい。

印南 敦史 作家、書評家

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事