「個人の権利」と「社会の利益」、この2つがぶつかったらどちら選ぶか?そして、あなたが当事者ならどうするか?という究極のジレンマ

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そんなB村が洪水に襲われても財産被害は大きくないが、人的被害は大きくなる。現実的に村民を避難させる時間的余裕がないからだ。

さらに大きな問題は、自分がこの選択をしなければならない最高権力者であるということ。さて、ダムを爆破するという提案を受け入れるだろうか? それとも拒否するだろうか? 選択肢が2つだけだとしたら、どうするだろう?

「国の未来がかかっているのに」と責められる

全人類の教養大全1
(画像:『全人類の教養大全1』より)

そこで決定の参考にするために、非常事態安全保障会議を開いた。緊急事案ということで集まったほぼすべての大臣が「ダムを破壊するべきだと思う」と主張すると、総理が反論した。

「閣下、爆破してはなりません。まずA市は物質的な被害を受けませんが、B村は100名以上の人的被害が起きると予想されています。国による殺人だと、市民と野党は大きく批判するでしょう。また、支持率が悪化して次回の総選挙で不利になるかもしれません。さらには政治的利益を超えて、実際に国民を選択的に殺害する行為です。倫理的な観点からも許される行為ではなく、大統領任期が終わったあとにこの責任を免れるのは難しいでしょう」(279〜280ページより)

たしかにそのとおりかもしれない。そのため、とうてい爆破できそうにないという結論に思い至り、最高権力者である自分は答えた。「では、爆破しないということで……」。ところが、言い終わる前に国防大臣が声を荒げた。

「いまのように国家全体の未来と安保がかかっている状況で、政治的、道徳的非難を避けてダムの爆破をやめたのなら、これは民族と国家に対する裏切り行為ですぞ!
国防省はちょうどA市の入り口に位置しており、最初に国防省が浸水します。すると国家安保のすべてがマヒし、われわれは無防備な状態になるでしょう。対立するX国からの侵攻を防げなくなったら、どうするおつもりか。
さらには、政府が国家全体の利益を考えるべきときに、わずかな個人の犠牲すら受け入れられないとなれば、政府に課されている業務をまっとうしていないのではないか。大統領閣下の責任も免れないでしょう」(280ページより)
全人類の教養大全1
(画像:『全人類の教養大全1』より)
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