「作っても読まれない」分厚い社史が…老舗ワックスメーカー《リンレイ》が、社史をミュージカルにした結果
「かつては、先輩や上司がお酒を飲みながら、あの頃はこうだった、という話をしてくれて、それを聞いて、僕らは学び、物事を決めるときの指針にしてきました。ところが昭和のこと全般が話しづらい時代になっています。とくにバブルの頃の自慢話を若い人に絶対しちゃダメな雰囲気です」(鈴木さん)
時代の変化と若い世代との関わりについて頭を悩ます鈴木さんと加藤さんは、かつて博報堂でともに仕事をしていた同士。鈴木さんはCMの制作、加藤さんは営業で、大ヒットCMを手掛けてきた。さらに、リンレイの社長・鈴木信也さんも同じ博報堂の出身。
今回の社史演劇も、広告代理店的な感覚があるからこその思いきった冒険企画なのかもしれない。広報の仕方としても競合他社との差別化にもなるだろう。
「非常に面白い試みだと思います。社史演劇が今後、企業間に広がるといいですよね。」と加藤さんは展望を語った。
社史もまた、みんなが見て楽しいものであれ

リンレイは、2018年にリンレイアワードという、「日本のキレイ」をテーマにした短編小説公募プロジェクトで、大賞をとった『箒』をショートフィルム化し公開もしている。文化活動に熱心な企業でもあるのだ。
「誰もが見て楽しいなと思ってもらえるものを作るのは本当に難しいと思う」と加藤さんは言う。会社で販売する製品はみんなが使って快適になるものだが、社史もまた、みんなが見て楽しいものであれという意外な盲点に着手したのが社史演劇といえるだろう。
社史演劇は企業活動の活性化のみならず、演劇界にとっても新たな観客との出会いにつながる可能性がある。アメリカの企業ミュージカルのようなジャンルが日本でも花開くと、頭の痛い継承やコミュニケーション問題の解決も一歩前進しそうだ。
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