「作っても読まれない」分厚い社史が…老舗ワックスメーカー《リンレイ》が、社史をミュージカルにした結果

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物語の舞台は戦後から現代までで、世代の違う登場人物が出てくる。“ガチ史実”ではなく、登場人物の名前も設定もあえてふんわりとしたものに。だからこそ歴史の勉強という気分にもならず、誰もが肩の力を抜いて楽しみながら、自分ごととしても考えることができる。

「正確さを優先すると、どうしても説明的になってしまいます。戦後から令和の間に日本の社会が大きく変遷していった中で、一般市民たちの『キレイ』に対する意識みたいなものが変化していったのではないだろうかという仮定と、リンレイさんの歴史やスピリット、社員の皆さんのいろいろな思いを重ね合わせると、時代全体を見渡すような作品になるのではないかと。すごく壮大なことを言っていますが、時間にしたら数十分です」と語る鈴木さん。

自慢話を若い人に絶対しちゃダメな雰囲気

脚本を手掛けた朝ドラことNHK連続テレビ小説『あすか』(1999年度後期)でも、京都の老舗和菓子店をモチーフにしていた。そのときも、多くの取材をもとに、フィクションを作りあげた経験がある。

最近では小津安二郎監督をモデルにした演劇『先生の背中~ある映画監督の幻影的回想録~』(PARCOプロデュース、行定勲演出、中井貴一主演)の脚本も書いている。フィクションとノンフィクションのバランスをとるのに長けた作家なのだ。

演劇では令和世代の人たちと昭和世代の人たちとのコミュニケーションの問題も描かれる。これがまた世代の違う社員同士のコミュニケーションの問題を解決するきっかけにもなりそうだ。

「いま、世の中的に、昔話をすると若い社員に煙たがられるので、しちゃいけないみたいな雰囲気もありますよね。コロナ禍もあって、そもそも会社内での飲み会も減っています。そうすると、ますます昔の会社はどうだったのかを知る機会が失われる。だからといって社史みたいに重たいものにするとなかなか手に取られにくい」(加藤さん)

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