「作っても読まれない」分厚い社史が…老舗ワックスメーカー《リンレイ》が、社史をミュージカルにした結果

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鈴木さんは学生時代から演劇活動をはじめ、大手広告代理店・博報堂に就職してからも続け、両者で結果を出してきた。これまでの経験を最大限に生かせると確信した鈴木さんは単なる企業の歴史をまとめたものではなく、笑いあり歌ありのミュージカル・コメディのような演劇に仕立てた。

出来上がった台本を見て社長も驚いていた、と加藤さん。

「社長のお父様とおじい様が歴代の社長でもあり、社長は社史を自分ごととして考えています。その社長が台本を読んで、会社を立ち上げた方々の当時の気持ちをよく表現していただいていると感じたようです」(加藤さん)

それを聞いて鈴木さんはにっこり。

「社長にそういうふうにとらえていただいて、社史を演劇作品にすることと結びつけていただいたことは、演劇を作る側としてもとても嬉しいことです」(鈴木さん)

劇中に散りばめられた「キレイ」というワード

社史を演劇にと聞くと、社内イベントにおける寸劇のような余興を想像する人もいるだろう。それが、一流の演劇人による本格的なものとなれば見るほうのテンションも断然違ってくる。

リンレイは、1944年、東日本特殊塗装剤工業株式会社として設立。株式会社リンレイとなったのは1959年。戦後、西洋化してきた住宅の掃除用品の販売と、林立していくビル群をプロフェッショナルの手で清掃するノウハウを確立していった。

それを「キレイ」というワードで並行して描き、会社と日本の歴史もよくわかる物語になっている。

そこに多くの楽曲が入り、ミュージカル仕立てになっている。厳密にはミュージカルというよりは音楽劇の範疇だが、オリジナル楽曲が10数曲もある力作である。

オリジナル楽曲のほかに、有名な昭和のヒット・ソング「私の青空」が効果的に使用される。これはリンレイのテレビコマーシャルでも使用されている曲だ。鈴木さんは「『私の青空』は時代をつなぐひとつの通奏低音みたいなものとしてあるんじゃないかな」と使用した意図を語る。

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