生成AI導入で効率化しているのに"儲からない"のはなぜ? 意外と多い「自己満足の落とし穴」3つのパターン。「重要なのはAIそのものではない」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

多くの企業はそうではない。「AIで生産性を上げ、競争力を強化する」と大義名分を掲げるのだ。

組織の情緒的なメリットを重視するのは悪くない。しかし、それなら業績への期待値を下げるべきだ。両方を追い求めるから、中途半端な結果に終わることが多い。

測定すべきは「削減時間」ではなく「再投資効果」

多くの企業は「AI導入で年間1000時間削減」といった数字を誇る。しかし、それは中間指標に過ぎない。本当に測定すべきは「削減した1000時間で、いくら売り上げアップのための活動を創出したか」である。

具体的には次のような指標を設定すべきだ。

・削減時間あたりの新規提案数
・削減時間あたりの顧客接触回数
・削減時間あたりの受注金額

これらを継続的に測定し、改善する。PDCAサイクルを回すのだ。

実際に成果を出した企業について紹介しよう。従業員80人の印刷会社の事例だ。

この会社は生成AI導入で売り上げ10%アップ、コスト30%削減を実現した。単にAIを導入しただけではなく、削減したリソースを戦略的に再配分したおかげで、これだけの利益アップにつなげられた。

まず経済的コストの削減に着手した。退職者2名の補充を見送る決断をした。なぜそれが可能だったのか。生成AIが商談管理と売り上げ予測を担うようになったからだ。

「SFAやCRMがなくても、AIで十分管理できる」

社長はこう判断し、年間数百万円のコストがかかるシステム更新を中止した。そのおかげでデータ入力作業が激減し、システム活用の勉強会も不要になった。

ここからが重要だ。削減した時間を何に使ったか? 営業部門は週3時間の勉強会をやめ、その時間を重要顧客との戦略会議に充てた。営業アシスタントたちは入力作業の削減分を展示会来場者へのフォロー電話や、営業支援資料の作成に回した。

「AIで浮いた時間は、必ず顧客接点の強化に使う」

このルールを徹底したのだ。その結果、重要顧客への訪問頻度は1.5倍に増加。提案の質も向上し、成約率は15%改善した。

この事例が示すのは、削減したリソースの使い道を明確にしたことだ。そして、それらを測定・管理し続けたのである。

■まとめ

生成AIを導入しても業績が上がらない企業には共通点がある。目先の効率化で満足し、その先の成果創出まで考えていないことだ。

削減した時間やコストを、どこに再投資するか。この問いに明確に答えられなければ、AI導入は自己満足で終わる。

重要なのは、AIそのものではない。AIで生まれたリソースをどう活用するか。この戦略と実行力が問われている。

横山 信弘 アタックス・セールス・アソシエイツ 代表取締役社長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よこやま・のぶひろ / Nobuhiro Yokoyama

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。近著に『トップコンサルタントの「戦略的」勉強法』。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事