生成AI導入で効率化しているのに"儲からない"のはなぜ? 意外と多い「自己満足の落とし穴」3つのパターン。「重要なのはAIそのものではない」

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では、具体的にどのような落とし穴があるのか。実際の事例をもとに3つのパターンを解説しよう。

(1)メール自動生成のパターン

見込み客へのメール文面をAIで自動生成する企業が増えてきた。確かに作成時間は劇的に短縮される。1通作るのに10分かかっていたのが3分になれば、7分も削減される。100通なら700分、つまり約12時間の削減になる。

しかし、AI活用によって生み出された12時間で何をしているのか。

多くの営業担当者は「他の業務に充てています」と曖昧に答える。具体的に聞くと、社内会議の準備や資料整理など、直接売り上げに結びつかない業務ばかりだ。

本来なら、削減した時間で追加の提案活動や新規開拓の電話をすべきである。しかし実際は空き時間が増えただけ。結果として売り上げは変わらない。

(2)議事録要約のパターン

商談議事録をAIに要約させるケースも同様だ。作成時間は確かに短縮される。しかし、そもそもこの議事録は必要だったのか? 何に活用されるのか? 活用されない記録文章を要約したところで、売り上げや利益がアップすることはない。

利益を上げたいのなら、経済的コストを削減することが重要だ。時間的なコストや、労力的なコストを落としたところで、業績には、ほとんど影響はないのだから。

(3)データ入力自動化のパターン

顧客管理システム(CRM)への入力を音声認識とAIで自動化する企業も増えた。たしかに入力作業は楽になる。しかしそれによって、どんな影響があるのか?

システムに蓄積されたデータを活用してマーケティングに役立てたり、商談を前に進めるための助言を求めるのならいいが、そうでなければ、入力作業を効率化しても売り上げは上がらない。データの正しい活用ができていないのなら、入力作業の効率化は意味がないのである。

なぜ「自己満足」で終わってしまうのか

これらの事例に共通する問題は何か。それは「時間」と「労力」のコスト削減ばかりに焦点を合わせ、「経済的コスト」を軽視していることだ。

多くの企業は次のような指標で効率化を評価する。

・メール作成時間の削減率

・議事録作成の短縮時間

・データ入力の自動化率

・AI活用率

これらはすべて「時間」や「労力」の指標だ。いくら改善しても、売り上げや利益には直結しない。本来追うべきは「成果」の指標である。

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