もちろん、この鮮やかな切れ味には、代償も伴う。現実の世界は、二元論で単純に割り切れるほど甘くはない。たとえば保守の中にも、リベラルの中にもさまざまなグラデーションがある。義務論と功利主義をともに批判する倫理学の理論もある。
より深みへ分け入るための地図
その意味で、本書はあくまで教養の「第一歩」を踏み出すためのざっくりとした地図にすぎない。だが、広大な知の世界で迷子にならないために、まず1枚のシンプルな地図を手にすることの価値は、計りしれないほど大きい。
著者が願うのは、読者がこの地図を手に、安心して知の探求に乗り出すことだろう。本書で得た対立軸という視点を武器に、今度はその対立軸そのものを疑い、二項対立を乗り越えようと試みる思想に触れてみる。あるいは、歴史の細部、経済理論の深みへと分け入っていけばいいのだと。
ただし、それぞれの分野では「はじめの一歩」と思えるような対立軸であっても、それを広く網羅して知っている人は少ないのではないだろうか。
この『全人類の教養大全』の「1巻」「2巻」では、歴史、経済、政治、社会、倫理、哲学、科学、芸術、宗教という広大な分野それぞれに、基本的な対立軸があることを手取り足取りレクチャーする。
それを1人で果敢にやってのけた著者の情熱には、戦慄すら覚える。
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