給料日には、阿形社長自ら一人ひとりに給与袋を手渡し、社員と対話します。給料を持って帰る父親とそれを笑顔で迎える家族たち。いつもの発泡酒がビールになり、おかずが一品増えたりする。そんな食卓のだんらんを思い描くのが楽しい、と阿形さんは仰います。
見える化は何もピンクのシャツだけではありません。この会社、玄関を入ると靴を脱いでスリッパに履き替えます。そのスリッパが実に気持ちよく並べられています。脱いだ靴も、いつの間にかきちんと揃えられています。これも、「見える化」のひとつの表れです。
「見える化」はトイレまで
そしてトイレを借りようと、そのスリッパで一歩足を踏み入れると、その豪華さに驚きます。
「ホテルのスイートルームのトイレなんか、めったに使えません。でも、会社のトイレは、社員が毎日使うところなので 気持ちよく使ってもらえたらと思い、同じ仕様にしたんですわ。」と阿形社長。
この「見える化」は、普通はなかなか思いつきません。社員の気持ちに沿ったすばらしい「設備投資」だと思います。
「体で例えるなら、心臓は社長、冠状動脈が幹部、張り巡らされた毛細血管が社員です。そのどれかが欠けても、体は動きません。会社も、社員を大切にしなければ機能不全に陥ります」
先程の経営理念、『安心して眠れる会社、笑って働ける会社』には、「顧客」という視点がないのでは、という指摘もあったそうです。内向きなのでは、ということです。確かに、会社が存続するには、「自分よし、相手よし、世間よし」という「三方よし」が必要と言われます。
しかし、その中でまず対応できるのは「自分よし」ではないでしょうか。社長がピンクのシャツを着るだけでなく、会社のスタッフ全員が笑顔でいられるように心掛けること。社員全員が「自分よし」であるように努めることが、「相手よし、世間よし」の「3方よし」に繋がる、と阿形社長は言います。
「会社人である以上、人生の大半の時間を仕事に費やします。その時間が、辛かったりネガティブに費やされるのは悲しいことです。だからこそ『安心して眠れて、笑って働ける会社』を経営目的として、今以上に楽しく働ける環境づくりを進めていきたいのです」
社長がピンクのYシャツを着て、社員の笑顔も絶えない、そんな職場が長く続けばいいな、と思います。
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