この3Dマップはコックピットに置かれた大画面のナビシステムに投影されており、各種センサーで把握した周辺の車両情報なども含めて、リアルタイムで映し出されていた。人間の肉眼では認知しにくかった後方の車両の状況や、数台離れた車両の状況までも一目で把握でき、非常にわかりやすい。
今回の実験車は操舵(ハンドル機能)が複合的に加わった状態で、自動運転の専門家が規定する「レベル2」だが、この詳細なナビがあれば「レベル0」でも、つまり自動運転の要素が何も入っていない普通の車でも、安全運転の実現に効果があるのではないだろか。「認知・判断・操作」の「認知」だけでも分かりやすい情報を提供すると十分にドライバーは安全運転が可能となる。目だけでは情報が足りないのではないだろうか、と思った。
実用化までに乗り越える課題は山積
約7分間の実験走行は問題なく終了したが、実用化までに乗り越えるべき技術的な課題は山積している。今回の実験が自動車専用道路で行われたのはセンシング能力が十分ではないためだ。首都高なら周囲の障害物は車と壁くらいのもの。しかも、唯一の移動体である車は車線に沿って走行しているので、挙動を予測しやすい。
しかし、一般道となれば大人も子供も犬猫もいる。速足だったり、立ち止まっていたり、突然に走り出したりもする。自転車やベビーカーや車いすとも共存しなければならない。こうした複雑系のなかで適切に認知・判断を行うにはセンシング技術やAIをもっと高度化する必要がある。
また、ライダーなどの外側を覆うカバーが泥や雪で曇るとセンサー機能を発揮できないという、意外にアナログな課題も明らかになっている。必要なのは防汚素材か、自動浄化装置か、はたまた新技術なのか。課題解決のソリューションは自動車産業やIT業界以外のところにあるのかもしれない。現状の課題は何で、どこにどういった技術が必要なのかを総合的に把握しているのは他でもないトヨタだ。オールジャパンの力を結集し、自動運転の覇権を掴みとれるかどうかはトヨタ自身の情報発信力にかかっている。
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