「未来予想図」の創造が人を絶望の淵から救う がんの悪夢と闘い続けたつんく♂氏の思考法

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 アンガーマネジメントの基本に「過去を振り返らない」という考え方があります。過去のことをいくら悔いたところで、それはもうどうにもならないことですし、後悔は「一次感情(イライラのもと)」になるからです。

つんく♂氏は、「後悔の弁」こそ残していますが、これまでずっと真摯に、その時々を全力で生きてきた自分を否定することはしていません。そしてその真摯な姿勢は、声を失った今も健在です。

 その証拠に、真摯かつ多くの優しさに満ちた「つんく♂イズム」が、今春大きな話題となった、近畿大学入学式での新入生へのメッセージにも息づいています。

私も声を失って歩き始めたばかりの一回生。みなさんと一緒です。
こんな私だから出来る事。こんな私にしか出来ない事。
そんな事を考えながら生きていこうと思います。
皆さんも、あなただから出来る事。あなたにしか出来ない事。
それを追求すれば、学歴でもない、成績でもない、あなたの代わりは無理なんだという人生が待っているのだと思います。

 

「自分が歌わなくてもできることがあるはず」

そして今の彼は、確実に、次の一歩を踏み出しています。『SONGS』では、歌手のクミコさんによる現代子守歌『生まれてきてくれてありがとう』の作曲とプロデュースを手掛けられた様子が紹介されていました。

また親友の長瀬智也さんの歌にギターを合わせた後、「音楽は生きる力を与えてくれる」とパソコンのキーボードを叩き、「自分が歌わなくてもできることがあるはず」「これまでにない新しいサウンドを創りたい」という、クリエーターとしての所信も表明されていました。

著書の中では、次のような前向きな記述もされています。

ニューヨークでモーニング娘。のライブに立ち会い、僕が歌えなくても、僕の言いたいこと、したいことは作品になって世に残ると納得することができた。
ニューヨークでは、もうひとつ僕の胸に大きく響いたことがある。
長女に「お父さんの声ね、もうすぐでなくなっちゃうかもしれない」と話した時(中略)「分かった。じゃ、私がお父さんの分まで歌うね」と、さらっと言った。
「僕の子どもが、僕の分まで歌ってくれる」―― ニューヨークに行ってよかったと心から思える瞬間だった。

 

大きな希望、目標が生まれれば、人はさらに強くなるのかもしれません。

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