前回は、がん治療のために大事な声帯を切除し、家族と共に生き続ける選択をしたつんく♂氏のさまざまな発言から、アンガーマネジメント的発想で窮地を乗り越えるための方法を考えました。
さて今回は、お気楽なようで実はためになる事柄の多い蛭子能収氏の思考法を取り上げたいと思います。著書『蛭子能収のゆるゆる人生相談』(光文社)や氏のインタビューなどをもとに、蛭子さんに学ぶべきアンガーマネジメントの実践的テクニックを検証していきましょう。
蛭子さんのお話に入る前に、ひとつ紹介したい事件があります。それはつい先月、和歌山県で発生しました。小学校に勤務する教諭の女が、元同僚の女性教諭について「不倫している」などと誹謗中傷する内容のビラをまいたとして、県の条例違反の疑いで逮捕されたのです。
「怒り」は相手以上に、自分の精神を傷つける
女は1カ月に4回、合わせて約70枚のビラをまいており、調べに対し容疑者は、「共通の知人男性について妬みがあった」「むしゃくしゃしてやった」と話しているようです。
本連載の過去の記事でも、溜め込んだ怒りは持続し、成長し、攻撃性を持つことを何度か論じてきました。怒りの感情の扱いはとても厄介で、溜め込み過ぎると成長し、「恨み」「憎しみ」といった、より強い感情となり、歪んだ報復措置として表出することがあります。上記の事件も、その顕著な例といえるでしょう。
「相手を許さない」というマイナス感情のエネルギーは凄まじく、相手の粗探しや嫌がらせにどんどんのめり込んでしまいます。こうなるともはや思考停止状態、相手以上に自分の精神を害している状態です。周りから自分がいっそう惨めに見えることにも気づけません。
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