「怒りエネルギー」が導く“成功”と“破滅” ノーベル賞受賞者と芸能人落書き騒動に学ぶ

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有名女優がかつてのマネージャーに命じ、元プロ野球選手宅の壁やガレージに「バカ」「アホ」「バカ息子」と落書きをさせたかもしれない旨、各メディアで報じられました。真実はまだ明らかになっていませんが、週刊誌の記事には、女優と元プロ野球選手の妻は子どもを同じ幼稚園、学校に通わせており、当初は仲がよかったものの何らかのトラブルで疎遠になり、女優が孤立する形になったと書かれています。

溜め込んだ怒りは持続し、成長し、攻撃性を持つ

怒りの感情は、とても厄介で、溜め込み過ぎると成長し、「恨み」「憎しみ」といった、より強い感情へと成長し、さらには歪んだ形で表出することがあります。いじめ、ハラスメント、ストーカーなどは、その顕著な例といえるでしょう。

怒りを上手にリセットできず、毎夜眠れないほどの怒りにさいなまれ、常に報復ばかりを考えている生活は、まったく建設的ではありません。精神衛生上もよろしくないでしょう。

前々回(錦織圭選手)前回(田中将大投手)とスポーツの話を書きましたが、スポーツにおけるライバルなどへリベンジを誓うときの感情と、恨みや憎しみの報復とは、趣をまったく異にします。スポーツにおけるリベンジは、中村教授同様、怒りを建設的パワーに変えた好例ですが、恨みや憎しみからの報復攻撃は、加害者も罪悪感から精神を病んでしまうことがあります。

くだんの女優のブログによると、前マネージャーもうつ病を患っているとのこと。もちろん落書き事件の真相は定かではありませんが、他人に成りすまして、SNS等に上司や会社の批判を書き込んだ者が、罪悪感からうつ病を罹患してしまうケースを彷彿とさせます。

「怒り方」の選択の誤りは、人生の大誤算どころか、刑事事件にもつながりかねません。では、私たちはどのような怒りの選択基準を持てばよいのでしょうか。

アンガーマネジメントは技術論です。喜怒哀楽に代表される人間の基本感情のうち、怒りの部分にフォーカスを当て、感情の性質を見極めながら、どのように扱うかを技術的トレーニングによって采配できるようになることを目指すのです。

怒って変えられること、怒っても仕方のないこと

大前提となるのは、何度も書いているとおり「怒らなければいけないことには上手に怒れ、怒らなくていいことには怒らないようになれ」ということ。

前投稿のとおり、天気、渋滞、電車の遅延といった、「怒っても仕方のないこと」には、傘をさす、好きな音楽を聴く、相手先への報告と代替案の提示といった「現実的・具体的対処策」を講じるしかありません。

では、怒って「変えられること」には、どう対処しましょう。「怒らなければいけないことには、上手に怒る」とは、どういうことでしょうか。

それは、「いつ、どうやって、どの程度」怒るのかを自分の責任で決めることです。これらを決められないと、「怒りたいのに怒れず」に後悔をするし、「怒りすぎてしまって」罪悪感に苦しめられることになるのです。

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