「怒りエネルギー」が導く“成功”と“破滅” ノーベル賞受賞者と芸能人落書き騒動に学ぶ

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自分が「怒りきる」ことや、相手を「不快にさせる」ことを主眼におくと、ベクトルを誤って、直接的、間接的な暴力行為、破壊行為につながることがあります。「落書き」は関節的破壊行為といえるし、行為後の罪悪感や焦燥感につながります。上手な怒り方とはとても言えない、不毛な怒りの表出です。

結局重要なのは、早めの対処です。学校でのいじめも会社でのパワハラも、早めに気づいて当事者同士を離せば、傷口を広げずに済みますが、事態を放置してしまうと、誰が加害者だか分からず、解決に困難を極めます。

選択の分水嶺とは?

怒りの感情への向き合い方も似ていて、問題の先送りをせず、早めに「現実的・具体的対処策」を講じるのか、「いつ、どうやって、どの程度」怒るのかを自分の内的基準で「選択」することこそ重要です。

ノーベル賞受賞の中村教授は、前勤務先と200億円の報酬支払いを巡り係争をしていましたが、8億4000万円で和解した理由の1つに、担当弁護士からのアドバイスがあったそうです。「天才中村が、裁判の長期化でこれ以上研究の時間を奪われるのは、人類の損失につながる」といった旨の説得だったとのことです。これは現実的・具体的対処策の選択と言えるかもしれません。

選択の分水嶺となるのは、先述したとおり、怒って「変えられること or 変えられないこと」であり、「後悔し、罪悪感にさいなまれないこと」でもあります。後悔したり、罪悪を感じるような結果を導くのなら、もともと怒らなくてもいいようなことなのです。

後悔や罪悪感などの心の不安定は、「一次感情(プライマリー・エモーション)」といいます。これはさらなる怒りのもととなりやすく、負のスパイラルを起こす可能性をはらんでいるので注意です。

怒りきってスーっとするつもりが、焦燥感や猜疑心などで、ビクビク、イライラして過ごさなければならないという状況に陥るなら、こうした危険を防ぐアンガーマネジメントをしっかり身につけたいですよね。

アンガーマネジメントに興味を持たれたかたは、拙著『パワハラ防止のためのアンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)をご高覧ください。

小林 浩志 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター

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こばやし こうじ / Kobayashi Koji

 

青山学院大学大学院法学研究科修了(法学修士)。
横浜市戸塚区で社会保険労務士・行政書士の事務所を経営する傍ら、社会人大学院でパワーハラスメントの法的・実務的対策を研究。パワハラ防止策の有効なツールとしてのアンガーマネジメントを数多くの企業、学校、病院等へ紹介している。
・特定社会保険労務士、行政書士、第一種衛生管理者
・公益財団法人21世紀職業財団認定セクハラパワハラ防止コンサルタント(客員講師)
・一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会認定ファシリテーター
・日本スポーツ法学会会員
著書に『パワハラ防止のための アンガーマネジメント入門』(東洋経済新報社)、『現場監督のための 早わかり労働安全衛生法』(共著、東洋経済新報社)などがある。

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