中国はブラジルやアルゼンチンなど代替供給国からの調達を拡大したので、アメリカ農業は東南アジアやインドをはじめとした新市場の開拓を迫られた。
なお製造業では、アップルなど多くの企業が中国に組み立て・製造拠点を持っているので、多大な影響が発生する。この問題については3月16日配信の本欄(「関税でアメリカを再び豊かにする」というトランプ大統領の政策が"愚策"といえる決定的理由)で述べている。
米中両国で国民の不安が高まるおそれ
第1次トランプ政権時の中国との関税の応酬による経済的打撃は、両国で政府への不満を高める要因となった。アメリカでは、これが中間選挙に影響した。
2018年に実施された第1次政権時の中間選挙で、与党・共和党は下院で40議席を失い、民主党が多数派となった(ただし上院は共和党が多数派を維持)。このうち少なくとも5議席の喪失は、トランプ政権の貿易戦争による影響とされている。
とくに農業州が多い中西部の一部では、共和党候補が苦戦した。 アイオワ州では、農業団体が「貿易戦争で生計が危機に瀕している」と政府に不満を表明し、民主党が農業支援強化を訴える戦略で支持を伸ばした。
今後、再び関税による輸出減・物価上昇・企業業績悪化が進行すれば、有権者の不満が高まり、中間選挙の結果に影響を与える可能性が高まる。
中国政府は2018年当時、国内での不満に対してSNS上で「政府批判」の投稿を規制する一方で、「アメリカ帝国主義に負けるな」「国産品を買おう」といった愛国キャンペーンを展開。国民の不満を対外的な敵意に転換するような世論誘導を行った。
しかし2020年前後には、製造業の空洞化や若年失業率上昇などへの根強い不満が、都市部のSNSユーザーの間で共有されるようになった。中国では不満が表立って表現されることは難しく、代わりに「ナショナリズムの動員」や「統制強化」が行われる可能性がある。
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