第1次トランプ政権における米中貿易戦争では、中国政府は輸出産業に対して、次のような支援策や補助金政策を実施した。
(B) 税制上の優遇措置
(C) 雇用維持のための補助金
こうした政策の結果、大企業はサプライチェーンの再構築・生産の自動化によって、ある程度対応できた。一部産業は新興国市場での販路拡大に成功した。
しかし、労働集約型・中小企業では打撃が大きく、とくに広東省や福建省など輸出依存地域では閉鎖や人員削減が相次いだ。2019年だけでも、広東省東莞市では約4000社の中小製造業が閉鎖したと報道されている。
アメリカでは農家に大きな打撃
他方、中国はアメリカ産大豆や豚肉に関税を課すので、アメリカの農家に大きな打撃を与える。アメリカから中国への農産物輸出が停止すると、農業関連の雇用や収入が減少する。とくに中西部や南部の農家に深刻な収入減少の影響が及び、アイオワ州やイリノイ州などの農業州が大きな影響を受ける。
第1次トランプ政権のとき、平均的な中西部の農家では年間で数万ドル規模の収入の減少が生じた。1000エーカー規模の大豆農家では、中国の関税による収入損失が年間4万ドル超に達したケースもある。
中国に輸出できない分がアメリカ国内に滞留し、倉庫での保管費用や廃棄リスクが増大し、コストがかさむ一方で、現金収入が減った。さらに、農業機械、種子、肥料、トラック輸送、港湾物流など、農業サプライチェーン全体に収益減少が波及した。
2018〜2019年にこうした事態が起こった際、トランプ政権は市場促進プログラム(MFP)によって、約280億ドル(約3兆円)の補償金を農家に分配した。しかし、すべての損失をカバーできず、小規模農家は廃業や負債の増加に直面した。
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