地方の進学校から東京の私大を受験、娘の夢を叶えるために奔走した母親の回顧。現役合格を目指して22回受験、SNSに不安を吐露

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私大の一般入試受験料は、1回あたり3万〜3万5000円ほど。共通テスト利用入試は1万5000〜2万円ほどが相場だ。同じ大学であっても受験方式や学部を変えて複数回のチャンスをうかがうケースが多い。当然だが、受ければ受けるほどチャンスは増えるが、お金はかかる。

関東甲信越の私立大学の教員らからなる東京私大教連の調べでは、自宅外通学者の受験費用の平均は27万3800円(受験料、宿泊費、交通費)。受験に至るまでにも塾や予備校にお金をかけている家庭も多いだろう。

また現役合格を目指すか、第1志望がダメなら浪人と思って挑むかでも、受験回数の選択は変わる。

マユミさんは現役での入学を望んでいたため、全ての受験方式を合わせて22の入試に出願。受験料だけでおよそ65万円かかったが、必ずどこかには合格できるよう安全策をとった。公立校に通い、受験費用以外で大きな出費となったのは年間20万程度の通信講座費と、長期休暇中に通った予備校の季節講習会費用のみ。受験のトータル費用で見れば、さほど多いとは言えないのではないだろうか。

合格を待つ苦しい日々

こうして迎えた入試期間。マユミさんは1月23日から祖父母の家に滞在し、連日の入試に挑んでいった。

どこかは受かる。そう思って結果を待つが、余裕で合格ラインを超えていたはずの学校ですら、なかなか「合格」の文字が表れない。

各大学の発表日が来るたび、SNSには「娘、〇〇大学受かりました!」という投稿があふれた。子どもの合格を喜ぶ人たちの投稿を見るたび、マユミさんの母親は胸が苦しくなった。

その心中を綴ったのが冒頭の文「娘の大学入試。なかなか桜が咲きません」だった。出口の見えない受験の中で苦しむ子の姿を見ると、親は迷うし心が騒ぐ。客観的に見れば、母親はマユミさんを十分すぎるほどサポートしていた。それでも、あの時、もっと自分が見てあげていたらよかった、という後悔が尽きなかった。

この投稿には「同じ思いです」というものなど、60ものコメントがつき、その大半が共感や励ましの声だった。

合格の知らせのこない日々は、かなり苦しいものだった。何度も不合格を目にしていたが、2月下旬、マユミさんはようやく本命だった“MARCH”を含めた3大学から合格の通知を受け取った。

学校から提示された指定校推薦で進学先を決めていれば、これほど過酷な状況にはならなかったかもしれない。受験にかかる費用も大幅に節約できただろう。

だが、担任からの提案を受け入れていたら、本人の学びたい学部を諦めることになっていた。食品メーカーで商品開発の仕事に携わりたいと願うマユミさんの歩みはまだ始まったばかり。すべては本人が決めたこと、そして、これはマユミさんの人生だ。

本連載では、大学入試の体験談について取材・撮影にご協力いただける方を募集しています(オンライン取材可。仮名での掲載、プライバシーには配慮いたします)。
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宮本 さおり フリーランス記者

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みやもと さおり / Saori Miyamoto

地方紙記者を経てフリーランス記者に。2児の母として「教育」や「女性の働き方」をテーマに取材・執筆活動を行っている。2019年、親子のための中等教育研究所を設立。

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