金融庁が高齢者向け「プラチナNISA」検討の衝撃 高齢者が歓迎しても、蘇る「グロソブ」の亡霊

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投資信託の運用が持続的にうまく行き、その利益から毎月の分配金が出るのなら健全だ。しかし、利益だけでは分配額に足らず、元本を取り崩して分配を行う「特別分配」がたびたび起きる。この特別分配こそが、自分の足を食べるタコになぞらえた「タコ足配当」だった。毎月利益を受け取っているように感じさせながら、実際には自分の投資した資金を食いつぶしているのだが、それを知らずにいるシニア投資家が多かった。

この「タコ足配当」を生む毎月分配型投信を、これまで金融庁は長期投資向きではないと厳しく糾弾してきた。ところが、プラチナNISAでは容認しようというのだから、疑問符がつくのは当然ではないか。

高齢者は高い手数料を払わされかねない

現在、個人が保有するNISA口座のほとんどは、SBIと楽天の2大ネット証券が抑えている。楽天証券のNISA口座開設者の属性を見ても、60代以上は全体の8%ほど。むろん、一昔前よりデジタルを使いこなす高齢者は増えているだろう。しかし、数字で見ればまだ多くはない。今後プラチナNISAを始めようとした場合、高齢者はできれば人間が対応してくれる証券会社や銀行を選びたいのが本音だろう。

プラチナNISAは金融機関にとってもチャンスだ。それなりの預金額を保有するシニアに、どんどんセールスをかけていくに違いない。店舗を構え、そこに販売員を常駐させる以上、できるだけ利益率の高い商品を売りたいはずだ。

ネット証券ではノーロード(購入手数料無料)が当たり前だが、対面型金融機関では「購入時の手数料3%」など手数料の高い投資信託も勧められる。毎月分配型の投資信託がブームとなった頃も、手数料が高い商品が多かった。「お勧めされた銘柄を買っただけなのに」は通用しないのが投資の世界だ。プラチナNISAを利用する高齢者は、分配金の額だけに目を奪われてはいけない。

「プラチナ」とは言い得て妙でもある。さまざまなサービスや金融のランクには「プラチナ会員」があり、最上位にあたる。これらのランクは最優良顧客が対象になることが多く、下世話な言い方をすれば「ふんだんに資産を持っている富裕層で、こちらのサービスに対し気前よくお金を使ってくれるお客様」だ。政府はまさか、そんなことを期待して「プラチナNISA」などという愛称を付けた訳でないだろうが……。

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