帯状疱疹ワクチン接種で「認知症のリスク低下」世界的に有名な科学雑誌で相次いで発表 研究結果の中身と予防接種の重要性とは《医師が解説》
●40歳以上は帯状疱疹予備群
ところで、日本では1987年に水痘ワクチンが発売され、2014年に定期接種化されました。10代でも帯状疱疹を発症することがありますが、乳児期に水痘ワクチンを受けていると、帯状疱疹を発症しにくいことわかっています。自然に罹るより、ワクチンを接種したほうが予防になるのです。
ですから、水痘ワクチンの普及前に生まれた年代(約40歳以上の方)の多くは、帯状疱疹予備軍といえます。
帯状疱疹発症のきっかけ
ワクチン接種の有無のほかにも、さまざまな疾病が帯状疱疹の発症リスクになることがわかっています。
例えば、血縁者が帯状疱疹に罹ったことのある方は、そうでない方に比べてリスクが2.48倍高まります。また、外傷後は2.01倍リスクが上がるのですが、当院の皮膚科医によると、「歯科治療後に帯状疱疹になって受診する人が多い」とのことです。
帯状疱疹は単に神経の炎症が起こり、痛みが出るだけではありません。
神経は血管などさまざまな組織に分布しているので、神経細胞の中で増殖したウイルスもそれらの組織に広がります。
先ほど認知症のリスクになる可能性があるとお伝えしましたが、それ以外にも脳梗塞や髄膜炎、血管炎、視神経炎、網膜の壊死、下半身まひなど、多彩な合併症を引き起こすことが知られています。視力や聴力に影響が出る場合もあります。
一般の方ならいざ知らず、医師のなかにも帯状疱疹の合併症を軽く見て、「帯状疱疹は症状が出たら受診して、治療を始めれば大ごとにならない」と考えている人が少なくありません。当たり前のことですが、病気は罹ってから治療するより、予防するのが最良の方法です。
●帯状疱疹ワクチンは2種類
現在、日本では生ワクチンと不活化ワクチンの2種類が販売され、利用されています。
生ワクチンは、もともと小児の水痘ワクチンとして用いられていたもので、1回接種です。一方の不活化ワクチンはシングリックスという名前で、通常は2カ月間隔で2回接種を行います。
患者さんからは、どちらがいいのか?という質問をよくいただきますが、これらのワクチンの効果を比較検証した臨床研究はありません。ただ、過去のさまざまな研究報告から類推して、筆者はシングリックスを勧めています。
シングリックスは、50歳以上を対象とした厳密な臨床試験で、接種後4年間の帯状疱疹予防効果は97.1%、接種後10年間のフォローアップ研究では89.0%の予防効果が認められています。
一方、生ワクチンは50歳以上でワクチンを接種した人と、接種していない人をフォローアップしたアメリカでの研究では、接種後1年以内は65%前後、3年後は40%程度の予防効果が報告されています。イギリスでの電子カルテデータを用いた研究でも、帯状疱疹予防効果は接種1年後で67%、10年後で15%ということが明らかになっています。
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