帯状疱疹ワクチン接種で「認知症のリスク低下」世界的に有名な科学雑誌で相次いで発表 研究結果の中身と予防接種の重要性とは《医師が解説》
多くの方は生涯に1回しかかからないですが、近年は長寿命化や、ほかの病気や治療のために免疫が低下している人が増えており、2回、3回経験する方もいます。
帯状疱疹ワクチンと認知症予防効果
帯状疱疹の原因となるVZVは、帯状疱疹以外の問題を引き起こすことが、近年の研究でわかってきました。VZVが属するヘルペスウイルスの仲間は神経細胞を好むため、ウイルスが脳に悪影響を与えて認知症の原因になる可能性がある、というのです。
そして、この帯状疱疹を予防するワクチンに認知症の予防効果を示唆する研究結果が4月2日、『ネイチャー』で報告されたのです。この記事の概要は次の通りです。
イギリスのウェールズでは、1933年9月2日以降に生まれた人を対象に、帯状疱疹予防生ワクチンを無料で接種できる制度を、2013年9月1日から開始しました。対して、1日前の1933年9月1日までに生まれた人は対象外としました。つまり、生まれた日が少し違うだけの集団について、ワクチン接種の有無だけで病気の発症の違いを比較する、またとない機会だったわけです。
実際、ワクチン接種群と非接種群を7年間にわたって追跡調査したところ、帯状疱疹の発症率に差があった(ワクチン接種群が低かった)ことは当然ながら、接種群で認知症の診断を受ける人が非接種群に比べて約20%少なかったことが報告されました。
4月23日には同じく有名なアメリカ医師会雑誌『JAMA』には、オーストラリアでの研究結果が明らかになりました。こちらもウェールズと同様、公費ワクチン接種導入の前後の人々での認知症発症率を比較したもので、やはり認知症リスクの低下させていました。
より性格に効果を測定するには、「認知症予防効果」の検証を目的として臨床試験を実施しなければ確定しません。ただし、これら2つの研究は、臨床試験にかなり近いセッティングで実施されているため、ほぼ確定的と筆者は考えます。
なぜワクチンが認知症を予防するのか、はっきりとした理由はまだわかっていません。
ただ、帯状疱疹ウイルスが再活性化すると、体の中で炎症が起こり脳の血管を傷つけて血流を低下させる、神経の炎症によってアルツハイマー病の原因となるアミロイドの沈着やタウタンパク質の凝集を起こす、などが機序とされており、それをワクチンが防いだのではないかということです。
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