1日5分でもOK「認知症リスクが約30〜40%低下」する運動法――40代から徐々に進行する「記憶力低下」を防ぐコツを《医師が解説》

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さらに、口の中の細菌バランスも認知症と関係があることが最近注目されています。16週間の運動介入で、高齢者の口腔内環境が改善されたという研究もあります。

村上春樹さんのエッセイ『走ることについて語るときに僕の語ること』でもジョギングの効果が実体験として紹介されており、高齢でも多作な彼の作家活動の支柱に運動習慣があることは間違いありません。

認知症リスクが3〜4割減る運動法

現在、世界保健機関(WHO)は、すべての成人に対して、健康を維持するために一定量の身体活動を行うよう推奨しています。

その目安は、息が少し上がる程度の「中くらいの強さの有酸素運動」を週に合計150分以上、あるいは、息がはっきりと上がる程度の「強めの有酸素運動」を週に75分以上です。これに加えて、筋肉を鍛えるような運動──たとえば腕立て伏せやスクワット、ダンベル運動など──を週に2回以上取り入れることも勧められています。

しかし調査によれば、実際にこの運動量をクリアしている人は人口のわずか10〜30%程度。世界の70〜90%の人は「運動が足りていない状態」にあるのです。

ところが最近では、もっと短い時間でも運動の効果は表れるという研究が注目され始めています。

世界中で行われた大規模な疫学研究では、週30分程度の「高強度の運動」を行うだけで、全死因死亡リスクが約40%、認知症の発症および死亡リスクが約30〜40%低下することが明らかになっています。しかも、この効果は、長時間の軽い運動を続けた場合よりも大きいという意外な結果がわかっています。

「高強度」と聞くと、「マラソンのような激しい運動を毎週やるの?」と不安になるかもしれません。しかし、ご安心ください。

ここでいう「高強度」とは、「軽く会話はできるが、歌うのは難しい」と感じるくらいを目安としています。これは最大心拍数の約85%程度に上昇する負荷の運動で、トレーニング用語では「中高強度~高強度」に相当します。

最大心拍数は「208−0.7×年齢」の式から、例えば50歳だと173拍/分で、その85%は173×0.85=約147拍/分 となり、この心拍数に増えるくらいの運動を目標にします。

具体的には、下記のような運動例が相当します。

・速歩き:普段よりも歩幅を広げて、呼吸が少し速くなるくらいのテンポで歩く
・階段の上り下り:5〜10分間、一定のリズムで繰り返す
・インターバルウォーキング:3分間普通に歩いた後、3分間速歩き。このセットを2〜3回繰り返す

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