1日5分でもOK「認知症リスクが約30〜40%低下」する運動法――40代から徐々に進行する「記憶力低下」を防ぐコツを《医師が解説》

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なかでも、最先端の医学界で大注目されているのが運動習慣です。

脳の健康と運動習慣には、非常に深い関係がありますが、運動ための時間は必ずしも長い時間を必要とするわけではありません。少なくとも「週30分・きつめの運動でよい」というのが最近の見解です。

年をとっても脳は成長する

年をとれば脳は自然に衰えるもの──。多くの人がそう思い込んでいるかもしれません。確かに加齢によって脳の神経細胞は少しずつ減少し、記憶力や処理速度なども緩やかに低下していきます。

しかし、脳には「神経可塑性(かそせい)」と呼ばれる性質が備わっており、年齢を重ねても、新しい情報を学ぶと回復し、変化に適応できるのです。

この神経可塑性は、脳の中で新しい神経細胞のつながりを作ったり、使われなくなった回路を整理したりと、まるで筋肉が鍛えられて強くなるように、脳自身が成長するメカニズムです。

では、この神経可塑性を保ち、高めるにはどうすればよいのでしょうか。カギを握るのが、運動習慣です。

特に有効とされているのが、ウォーキングやジョギング、水泳、自転車などの持久性運動です。たとえば、定期的な有酸素運動を習慣としている人は、していない人と比べて認知症になるリスクが約30%低いというデータもあります。

また、脳の萎縮が始まっている高齢者においても、運動を続けることで海馬の体積が維持され、記憶力が改善したという研究も複数あります。このように、「運動=体の健康」だけではなく、「運動=脳の健康」であることが、科学的に明らかになってきているのです。

運動のメリットはほかにもあります。

記憶や感情をつかさどる「海馬」の働きを活性化する、脳全体への血流を増やす、炎症を抑える、神経細胞の健康を保つといった効果が、多くの研究で確認されています。最近の研究では、さまざまな仕組みで神経細胞の寿命を伸ばすこともわかってきました。

運動は腸内環境にも良い影響を与える可能性があります。

中強度から高強度の定期的な運動は、腸内細菌の多様性を高めることがヒトでも確認されています。腸と脳は「腸脳相関」といって、腸の健康が認知機能にも影響することがわかってきました。

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