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〈インタビュー〉ステーブルコイン「USDC」発行のサークル、ヒース・ターバート社長が語った「ジーニアス法成立」の意義と事業成功への道筋

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Heath Tarbert/サークル社社長。最高裁判所の法律書記官や国際法律事務所のパートナーを務めた後、2017年にアメリカ財務省に入省。財務次官補だった2019年、CFTC(アメリカ商品先物取引委員会)委員長に就任。2021年1月まで務める。その後はシタデル・セキュリティーズで最高法務責任者に。サークル社には2023年に入社(写真:Circle)
暗号資産の1つである「ステーブルコイン」。ビットコインなどとの大きな違いは、ドルやユーロなどの法定通貨と価値が1対1になるよう設計されている点だ。低コストで瞬時に海外送金することもできる。
代表的なステーブルコインの1つがアメリカのCircle(サークル)社が発行する「USDC」だ。足元で720億ドル(約10.6兆円)分のUSDCが流通している。ドル連動のステーブルコインではTether(テザー)社の「USDT」を追う立場だが、各国の規制に準拠している点を強みとする。
サークル社をめぐる動きはめまぐるしい。6月のニューヨーク証券取引所への株式公開に続き、7月にはステーブルコイン関連の規制を整備する「ジーニアス法」がアメリカで成立した。8月下旬、来日していたヒース・ターバート社長にジーニアス法成立の意義やサークル社の事業戦略への影響について話を聞いた。

――ターバートさんがサークル社に来て2年。この間でサークル社は大きく変わったのではないでしょうか。

この2年間で大きな成長を遂げた。USDCの取引額は2025年1~6月で6兆ドルに達した。世界の主要市場で認可を取得し、今年6月にはニューヨーク証券取引所への株式公開を果たした。

――ジェレミー・アレール会長兼CEOと、経営における役割をどう分担しているのか教えてください。

ジェレミーCEOはテクノロジーのビジョナリー(先見の明を持つ人)という存在。1990年代初頭にケーブルテレビとコンピューターが同一の機器になると予想していた。

そして12年前、インターネットでメールを送るのと同じくらいに、簡単で安全に、かつ瞬時に価値を送ることができる可能性を感じ、サークル社を設立した。

一方の私は、政府で仕事をしていた経験や法務および規制に関するバックグラウンドがある。サークル社では法務、コンプライアンス、リスク、公共政策、広報、国際的な事業拡張を担当している。

会計上で現金と同等に扱えるように

――ステーブルコインの規制の枠組みを定める「ジーニアス法」の成立は、サークル社の事業環境にどのような変化をもたらすと思いますか。

重要な変化が2つ起こる。1つは、ステーブルコインの発行者にとって、しっかりとした規制の枠組みが作られることだ。これにより安全で健全なステーブルコインが実現する。

アメリカで発行、または上場されるステーブルコインに一定の要件が課せられる。価値を1対1で裏付ける資産として現金や短期国債などの現金同等物を「準備金」として保有すること、準備金の内容を日々、もしくは週次で公開し、誰でも閲覧できるようにすることなどが求められる。

連邦政府が規制する準備金管理の信託会社「サークルトラスト」に許認可が下りて業務を開始する際は、その会長に私が就任する。サークル社はこれらの要件の多くを以前から自らに課してきた。だが、競合の中には1対1の裏付けや透明性がないところもある。

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