
アメリカで2014年に放送されたドラマシリーズ「シリコンバレー」に次のようなシーンが出てくる。
グーグルを彷彿とさせる架空のテック企業にアイデアを売り込んだ主人公の仲間が、そのテック企業に引き抜かれるものの“使えない”ことが判明。何もやることのない「窓際族」となって会社の屋上に行くと、新しい同僚たちが折りたたみチェアに座りながら昼から酒を飲んでいる場面に遭遇する。彼らはほろ酔い加減で基本的に何もせずに給料をもらいながら、ストックオプションで最大限稼ぐために契約の満了を待っていると語る。
やることが何もないのに「なぜ出社を?」という登場人物の質問に、このテック技術者たちはビールを口に運びつつこう言った。
「楽して稼ぐためだ」
夢のような職場はもう存在しない
この皮肉なパロディーは、シリコンバレーの現実とそれほどかけ離れたものではなかった。当時、フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)、アップル、ネットフリックス、グーグルの若いエンジニアたちは、「ウェブ2.0」なる時代を思い切り謳歌していた。
彼らの仕事の多くは、音楽のストリーミングや写真共有サイトといった消費者向けインターネットサービスの構築だった。モバイルアプリが全盛で、フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグがすべての人々にフェイスブックのメールアドレスを付与したいと考えていた時代だ。
それはアメリカ企業の堅苦しい文化へのアンチテーゼでもあった。エンジニアたちは、虹色のビーンバッグ(ソファ)に座って朝のミーティングを行い、社内の寿司バーで無料のランチをとり、午後はオフィスの樽詰めクラフトビールを飲んでくつろいだ。そして、オフィスの白熱した卓球大会で汗だくになっても、ドライクリーニングが無料で提供された。
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