《ブームから10年》「一流シェフの料理を立食で安く食べる」で一世を風靡した「俺のフレンチ」。最新店舗を訪れて知った意外すぎる"現在の姿"

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単価6000円ほどの同店は、ちょうどその中間に位置する。

前者の知人を誘うには最大公約数の料理ばかりでわざわざ行くほどの魅力が足りず、後者の知人には値段が高すぎる。会社の飲み会にはぜひ使いたいが(一人6000円の予算があれば……)、プライベートの飲みで使うにはやや使い勝手が悪いと筆者は個人的に感じた。 

ニーズの逆張りで悲願の上場を目指す 

ちょうど同程度の価格帯の店を多く展開している飲食企業に、エー・ピーホールディングスがある。同社の動向を見ていると近年は前者の外食フリークに向けた尖った専門店に力を入れている。

かつての「塚田農場」のような「とりあえず塚田でいっか」と選ばれるような利便性の高い居酒屋から、わざわざ目的を持って訪れる、トレンドを意識した個性的な業態を増やしている。

例えば、渋谷の貝類をウリにした居酒屋「なきざかな」や、きのこ火鍋で若い女性に人気の「裏の山の木の子」などがそうだ。「俺の」とは逆の方向性で、どちらかといえばこちらの方が世の中のメインストリームに順張りしている。 

エー・ピーホールディングスが渋谷にオープンした「なきざかな」の名物「豪!貝風呂」(筆者撮影) 
同じくエー・ピーホールディングスの「裏の山の木の子」の、色とりどりのきのこを使った火鍋。見た目にも楽しいトレンドを意識した商品を出す店を増やしている(筆者撮影) 

嗜好が多様化した個人がプライベートで行くシーンでは物足りないが、会社の飲み会のような機能性を求められるシーンでは強い店づくりを行っていた「俺のフレンチ GRILL&WINE」。

会社の飲み会は減っていると言われつつも、完全になくなるわけはない。時代に逆張りし、かつてのスタイルとは真逆で狙いにいっているようだ。 

本稿では「俺の」全盛期であった2013年に刊行された書籍『俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方』(坂本孝著/2013年・商業界)を参考にしたが、同書によると、同社は当時から上場を目指していたという。

しかし、まだ諦めてない。2027年ごろをメドに、今度こそ上場を目指しているというのだ。ぜひ時代の逆張り戦略で成し遂げていただきたい。

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大関 まなみ フードスタジアム編集長/飲食トレンドを発信する人

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おおぜき まなみ / Manami Ozeki

1988年栃木県生まれ。東北大学卒業後、教育系出版社や飲食業界系出版社を経て、2019年3月より飲食業界のトレンドを発信するWEBメディア「フードスタジアム」の編集長に就任。年間約300の飲食店を視察、100人の飲食店オーナーを取材する。
Instagram:@manami_ohzeki

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