フェルメールの熱狂から追体験する、これまでの常識や固定観念にとらわれないプロダクト創り

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こうして「熱狂」の下に生み出された作品に対峙した鑑賞者は、静謐な室内に差し込む柔らかな光の美しさに感動します。

その後、フェルメールがさまざまな角度から光について徹底追究し、「光をどう感じ、どう伝えるか」に人生を賭けたことを知ると感嘆し、アーティストが感じた「熱狂」を追体験するのです。

フェルメールの熱狂を「完全再現」した鑑賞者

フェルメールが熱狂の下で作品に込めた「静」の光。光がどのように画面に差し込み、どう拡散していくか、それを自分でも再現できないか。――そのことに心を奪われた現代人がいます。

アメリカの発明家ティム・ジェニソンです。彼は、フェルメールの絵に宿る光の表現に魅せられ、「どうすればフェルメールのような絵が描けるのか?」という問いに人生を賭けました。驚くべきは、ティム自身が画家ではない素人だったということです。

それでも彼は、フェルメールの技法を科学的に再現することに挑み、数年にわたる研究の末、「フェルメールは、おそらくカメラ・オブスクラと鏡を組み合わせて、実際の風景を視覚的になぞるように描いていたのではないか」という仮説にたどり着きました。

ティムはこの仮説をもとに、17世紀当時の材料と技術を使い、自ら装置を設計・製作し、フェルメール作品の再現に取り組みます。その姿を追ったのが、ドキュメンタリー映画『フェルメールの謎:ティムの名画再現プロジェクト』です。

色の混ぜ方、筆致の方向、光の入り方まで、あらゆる要素を徹底的に観察し、フェルメールの絵画を再現していく彼の姿は、まさに鑑賞者の「熱狂」の最たるものです。

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