フェルメールの熱狂から追体験する、これまでの常識や固定観念にとらわれないプロダクト創り

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また、フェルメールの光の表現を支えているのは、ポワンティエだけではありません。もう1つの「感覚」が、主体の前景に物体を配置することで作品全体に奥行きを生み出す「ルプソワール」です。

《窓辺で手紙を読む少女》では、主体である女性の前景に緑のカーテンが、その横には青い磁器と果物が配置されています。これにより画面に奥行きを生み出し、鑑賞者は、まるでその場にいるかのような錯覚を覚えます。同時にカーテンの存在によって、左側から差し込む光がより強調され、室内に入る光の方向や広がりを実感できるようになっています。

《牛乳を注ぐ女》では、女性の前に置かれたパン籠がルプソワールの役割を果たしています。この前景があることで、光が画面の奥から手前へと流れるような感覚が生まれます。

つまりフェルメールは、単に光を描いたのではなく、光がどう感じられるかまで探究し、画面全体の設計に生かしているのです。

さらに、フェルメールの光の探究は、色彩にも及びます。なかでも象徴的なのが、「フェルメール・ブルー」と呼ばれるウルトラマリン・ブルーの使用です。この青は、ラピスラズリという非常に高価な鉱石から作られた顔料です。

聖母マリアの衣装に象徴として使うほど神聖な色とされていましたが、フェルメールはその青を、《牛乳を注ぐ女》や《真珠の耳飾りの少女》など、日常を描いた風俗画に惜しげもなく使いました。

特に《真珠の耳飾りの少女》のターバンに使われた鮮やかな青は、暗い背景の中で強烈な存在感を放ち、鑑賞者の視線を一瞬でひきつけます。この色彩もまた、光を印象づけるための重要な要素となっていたのです。

《真珠の耳飾りの少女》(1665年頃)
フェルメール《真珠の耳飾りの少女》(1665年頃)(所蔵:マウリッツハイス美術館、画像:Wikipedia[Public Domain])
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