毎日の授業に、繰り返しの暗記…《それでも最後の1割は戦闘でしか学べない》 アメリカの世界最強「海兵隊」士官候補生学校での学び
ダンキン候補生は最初から悪戦苦闘し、一週目にオールズから自分勝手だと槍玉に上げられていた。その非難が的外れではなかったことが立証される形になった。わたしも分かりかけたところだったのだが、教官たちが何より重視していたのは熱意と忠誠心だ。チームワークを大切にする気持ちを候補生に求めていたのだ。悪戦している候補生でも、必死で努力して成果を絞り出せれば挽回できるはずだった。
サプリメントは厳しく禁じられていた。わたしたちはゲータレードではなく水を飲み、工場で生産された栄養補助食品ではなく食堂の料理を食べた。どんな種類のサプリメントであれ所持しているのが見つかれば、名誉の冒瀆と見なされて即刻退学となる、と候補生全員に警告されていた。
ある晩、わたしたちが黒線に爪先を揃えて消灯ラッパを待っていると、教官がフットロッカーの検査をすると告げた。ダンキンの靴磨きセットの中に、交感神経興奮剤の瓶が1本隠されていた。その場に立ち尽くして泣きじゃくるダンキンに向かって、荷物をまとめて廊下へ出るように、とカーペンター二等軍曹が冷静な口調で言った。
怒鳴りもせず、芝居じみた言動もなく、ただ厳格な退学命令のみ。ダンキンは海兵隊士官になれる人間ではないという明確な宣言だった。小隊は気をつけの姿勢で立ったまま、ダンキンが荷物をまとめるのを黙って見ていた。ダンキンがセーラーバッグを肩に担ぎ、並んだ寝台の間を歩いていく時、口を開く者は誰ひとりいなかった。
命令する前に、まず服従を学ぶ
ダンキンはきわめて重要なルールを破った――率いる者と率いられる者の信頼の絆を断ち切ったのだ。リーダーの条件は、単なるテスト用の暗記リストではない。信頼。真摯さ。判断力。あの夜、わたしは軍曹教官と士官候補生の関係をはじめて理解した。命令する前に、まず服従を学ぶのだ。
10週間、教官たちはわたしたちを思い通りにできる。叫んでも怒鳴ってもいいし、靴下を毎朝15回脱ぎ穿きさせてもいいし、起床ラッパから消灯ラッパまでいびることもできる。しかし、ひとたび候補生が将校になるや、その権限は将校の手に移る。候補生は少尉になり、やがては大尉や大佐になっていく。
戦場で海兵隊の下士官兵を率いる指揮官となる。教官たちには、不適格な将校が海兵隊員を殺す前に、不適格な候補生を葬り去るという、きわめて現実的な特権があるのだ。
(訳:岡本麻左子)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら