時の権力者「田沼意次」政権の"賄賂横行" 恋川春町が皮肉った本が人々の共感を呼んだ理由

政権を皮肉った書籍が売れまくる
老中・松平定信(1759〜1829)が推進する「寛政の改革」を皮肉る黄表紙を相次いで刊行した蔦屋重三郎。
例えば、天明8年(1788)の『文武二道万石通』(作・朋誠堂喜三二)、寛政元年(1789)の『鸚鵡返文武二道』(作・恋川春町)などでした。ちなみに春町は天明8年には田沼意次政権と北方貿易のことを描いた『悦贔屓蝦夷押領』も執筆しました。
『文武二道』は、「古今未曾有の大流行」となり、早春より、袋入りにして市中で売られる状態。これは「前代未聞」と称されました。また、『鸚鵡返』も、人々の人気を博します。
ところが、それら両作を上回る人気を示したのが寛政元年の『天下一面鏡梅鉢』(作・唐来参和)で、問屋仲間や小売店の者まで、同書を買い取ろうと、行列ができたといいます。まだ製本されていない摺本のまま車に積み入れられた同書を、道端で買い取ろうとする人もいて、摺本に表紙をつづる糸を添えて、売られたほどでした。
これらの黄表紙が人気となったのは、政治を文学の題材としたことでした。時の権力者(例えば田沼意次や松平定信など)を登場させ、彼らの政治や改革を皮肉ったことにより、人気を博したと言えましょう。黄表紙が大衆の気持ちを代弁し、共感を呼んだということです。
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