遊女を地理に見立てた奇書をプロデュース
吉原で生まれ育った蔦屋重三郎は、少しでも客を呼べればと躍起になったのだろう。安永3(1774)年に『一目千本』(ひとめせんぼん)の刊行に踏み切っている。
人気絵師の北尾重政に絵を依頼し、各店の上級遊女である花魁(おいらん)の名を、実際にある花に見立てながら紹介した。これが、重三郎にとって初めての出版物となった。
その翌年に手がけたのが、『急戯花之名寄(にわかはなのなよせ)』だ。遊女の紋が入った提灯と桜花を取り合わせて描きながら、遊女についての短い評を添えており、どんなタイプの女性なのかが、よくわかりやすくなっている。
『一目千本』も『急戯花之名寄』も、掲載を希望する遊女や馴染み客から出資を募った入銀本だったと考えられている。


















無料会員登録はこちら
ログインはこちら