何もかもうまくいかなかった源内の鬱屈
「獄中で死んだはずの平賀源内が実は生きている」
そんな噂を耳にした蔦重が、様々なキーパーソンのもとを訪れる。NHK大河ドラマ「べらぼう」では、そんな展開が話題となった。
「源内生存説」は実際にもあった。源内はパトロンだった田沼意次の計らいによって、ひそかに出獄し、意次の領地だった遠州・相良にかくまわれて医師として生涯をまっとうした……明治初期に儒学者・東条琴台がまとめた『先哲叢談続編』など、そんな噂があちこちで流れたようだ。
突飛な発想で様々なジャンルで活躍した源内だったが、鉱山事業の失敗などにより、いつの間にか経済的な苦境に立たされた。エレキテルの発明も源内が期待したような、医学的効果は発揮できず、見世物として終わる。
精神的に追い詰められるなかで、自分の誤解から殺傷事件を犯してしまった源内。獄中で破傷風によって死亡している。
そんな源内の死に方があまりに意外なかたちだったからだろう。「源内先生がこんなかたちで呆気なく、突然に亡くなるなんて……」という人々の驚きと失望が「生存説」を生み出すことになった。



















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