
花魁行列(写真: 健一郎 / PIXTA)
NHK大河ドラマ「べらぼう」で主役となった、蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)。重三郎は20代前半で吉原大門前に書店を開業し、書籍の販売と出版をスタート。浮世絵師を巧みにプロデュースし、「江戸のメディア王」として名を馳せた。一体、どんな人物だったのか。また、重三郎が活躍したのがどのような時代で、どんな歴史人物と接点があったのかも気になるところだ。江戸時代中期に花開いた町民文化や、時の将軍の徳川家治やその側近らの人間関係とともに、この連載で解説を行っていきたい。連載第7回は次々とヒットを飛ばした蔦屋重三郎の戦術を紹介する。
著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。
重三郎が出版物で重視したこととは?
本を読むことは読者にさまざまな変化をもたらすが、居ても立ってもいられなくなり、行動を起こしたくなったならば、その本に心が動かされた証拠だろう。
世界的なベストセラー作家として知られる村上春樹は、読者からの「春樹さんの小説を読んでいると、ものが食べたくなるのです」という声に「僕はそういうフィジカルな感想って大好きです」と応じて「小説にはそういう実行力というものも必要なのです」と答えている(『そうだ、村上さんに聞いてみよう: と世間の人々が村上春樹にとりあえずぶっつける282の大疑問』朝日新聞出版より)。
蔦屋重三郎の出版物もまた、読者の行動を喚起するものだった。なんとか吉原に客を呼ぼうと、ガイド本『吉原細見』を読みやすくして刊行したり、遊女評判記を次々と発刊したりしている。
トピックボードAD
有料会員限定記事
ライフの人気記事
無料会員登録はこちら
ログインはこちら