東北が生んだ「究極のお土産」の意外な実力 復興庁主催の品評会はバイヤーで大賑わい
震災をきっかけに、内陸部の企業と沿岸部の被災した業者のつながりも新たに生まれている。山形県大蔵村は月山の北側に位置する山村だ。ここでわさびのしょう油漬けなどを製造していた企業と、石巻市渡波のノリ生産者が連携し、「手作り わさび海苔」が生み出された。製造元である「大蔵わさび」の八鍬とも子さんによれば、「被災した石巻のノリ養殖業者さんと、イベントで意気投合したのが製品開発のきっかけになった」という。
福島県会津若松市の老舗油屋「ひらいで食の工房」は、棚田で作られたもち米を使用して、かつて会津藩士の師弟がおやつに食べていた米飴を新たに開発。「会津の飴さま」の名称で売り出した。
「高齢化に加えて、原発事故の影響で耕作放棄が増えている棚田を守ろうと、オーナーになった。それがきっかけになり、商品開発につながった」と同社の平出美穂子代表はいきさつを語った。
津波被害に直撃された仙台平野では、震災後に大豆の生産が拡大している。仙台農業協同組合は地元産大豆を用いた「仙大豆ソイパスタ」を開発。昨年10月に「新東北のみやげコンテスト」で優秀賞を受賞した「仙大豆シリーズ」(ソイチョコなどの菓子類)とともに、戦略的な商品として東京などでも販売を開始した。
ハラル認証の取得、海外進出も
これまで東北の食材は品質の高さに定評があったものの、必ずしも販路開拓に成功しているとは言いがたかった。だが、震災を乗り越えて新たな市場開拓にチャレンジする企業も出てきた。石巻で唯一の麹製造所「島津麹店」を営む佐藤光弘さん(6代目)は、昨年11月に新たに開発した麹飲料「花糀(はなこうじ)」を発売。イスラム関連の団体から、ウェルカムドリンクとして使用したいとの要請もあり、ハラル認証を取得すべく手続きを進めている。「いずれは海外にも進出したい」と、サラリーマンをやめて震災後に麹製造にかかわるようになった佐藤さんは夢を膨らませる。
B級グルメブームの仕掛け人で、今回のイベントを取りまとめた「地域活性プランニング」の藤崎慎一代表取締役は、「東北企業のレベルは確実に上がっている。参加したバイヤーも取引先候補を見つけようと真剣になっている。これからは欧米市場にも積極的に打って出たらいい」と、企業の取り組みに期待を寄せている。現在はまだよちよち歩きだが、東北の中小企業が世界市場をめざす日もそう遠くないかもしれない。
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