烏龍茶は、茶葉の摘採後、茶葉を直射日光に当ててしおれさせる日干萎凋(いちょう)や、室内に茶葉を移して行う室内萎凋、発酵を促進させる回転発酵などの工程を経てできあがる。その後、茶葉を釜で炒って乾燥させ、揉捻(じゅうねん)という揉み込み作業を行う。
一方、紅烏龍茶は紅茶と同様、茶葉の揉み込みを乾燥より先に行う。
烏龍茶は半発酵茶に分類され、発酵度は通常10~80%程度。対して、紅烏龍茶の発酵度は80~90%程度で、烏龍茶の中で最も高い。このため全発酵茶(発酵度100%)である紅茶によく似た、琥珀色の水色(すいしょく)と、風味を持ち合わせている。
紅茶から烏龍茶に転向するも…
紅烏龍茶が誕生したのは2008年だ。
鹿野郷でお茶の生産が始まったのは、1960年代。台湾で本格的な製茶事業が始まったのが19世紀とされているので、鹿野郷は茶産地としては後発組といえる。
当初、鹿野郷ではアッサム種を使って紅茶を作っていたが、輸入茶葉との価格競争に敗れ、烏龍茶生産に移行。ところが、1990年代に入ると標高1000メートル以上の山地で採れた「高山烏龍茶」が台湾内外で人気を博し、台湾茶の象徴的存在となっていく。標高わずか350メートルである鹿野郷のお茶の人気は廃れていった。
鹿野郷は台湾南部にあり、熱帯気候に属する。おまけに標高が低いので茶葉の発酵が進みやすい。この特徴を生かした製法で作られているのが、紅烏龍茶である。
筆者が今回訪ねた女兒不懂茶も、紅烏龍茶を主力商品としている。鹿野郷では化学肥料や農薬を使用している農家もいるが、それらを一切使わない自然農法にこだわっている。
ブランド名である女兒不懂茶を日本語に訳すと、「娘はお茶のことがわからない」となる。
お茶屋なのに、はたしてそれでいいのだろうか――。そんな思いで本店を訪ねると、穏やかな笑みをたたえた女性が出迎えてくれた。彼女こそ「お茶のことがわからない娘」であり、共同経営者でもある林廷瑀(リン・ティンユー)氏だ。
廷瑀氏にブランド名の由来を聞いた。
「お茶の師匠でもある父の『お茶に対して謙虚でいなさい』という教えからです。茶業ひとすじ40年の父でさえも、お茶からはいまだ学ぶことばかりだ、と。一生お茶から学び続けるという想いを、『娘はお茶のことがわからない』というブランド名に込めました」
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