土壌のセシウム汚染が強いほどがんが増える?--トンデル博士が語るチェルノブイリ事故の事例

とはいえ、福島原発事故に関連して、低線量の放射能の影響をはっきりさせることは難しい。個人の生活習慣など、ほかの要因が紛れ込んでくるからだ。そのため、「スウェーデンでの結果を、そのまま福島の状況に当てはめることは避けたい」とトンデル博士は強調する。

ただ、京都大学の今中助教は、トンデル博士の研究について「きちんとした固定集団の追跡により、低線量被曝とがん発生の相関関係を明らかにした疫学調査。対象者数も圧倒的に多く、意義が大きい」と評価する。

114万人という数は、88年のスウェーデンの人口が約840万人であることを考えると非常に多く、太平洋戦争で原爆が投下された広島・長崎での被爆者調査の対象者が、約10万人であるのと比べても圧倒的な数だ。

このような大規模な調査が可能になったのは、スウェーデンで詳細な汚染測定データやがん登録データがそろっていたから。現在、福島でも健康管理調査を行ってはいるものの、「震災直後に何をしていたか」といった質問票が中心で、回収率も低いという。

「広範な地域で子どもたちの健康状態を定期的に検査し、その変化を追跡するシステムを作って、データを記録しておくことが大事だ」と今中氏は提言。「将来、何らかの症状が出たときに、そうした追跡データがなければはっきりとした診断ができない。影響が出てからでは遅い」と語気を強める。

福島原発事故に関連して低線量被曝による人体への明確な影響は、現時点で明らかになっていない。トンデル博士の論文についてもさまざまな評価がある。しかしながら、同様に深刻な事故を起こしたチェルノブイリ事故の事例に学び、積極的な対策をとる必要があることは確かだ。

(平松 さわみ =東洋経済オンライン)

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • ドラの視点
  • ネットで故人の声を聴け
  • 今見るべきネット配信番組
  • 日本野球の今そこにある危機
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
脱・ストレス 不安加速社会<br>への4つの処方箋

コロナ禍で、人と会ったり飲み会をしたりといった従来のストレス解消法がしづらくなっています。そんな今だからこそ、「脳」「睡眠」「運動」「食事」の専門家が教えるコンディショニング術でストレスフリーな状態を目指しましょう。

  • 新刊
  • ランキング
東洋経済education×ICT