見下される「ウーバー配達員」やって僕が得たモノ 安定収入より「精神の安定」を選んだ意外な結果

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 フルタイムの正社員として働くことが、本当に「唯一の正解」なのか……ぜひとも、あらかじめ敷かれたレールから途中下車して検証してほしいが、これが簡単にできない気持ちも痛いほどわかる。僕自身も、2度の解雇というきっかけがなければ、今のような生き方に至っていたかわからないからだ。だからこそ、もどかしい。 

収入は不安定。けれど精神的には安定 

今の僕は正社員の頃と比べて、収入は不安定になり、年収も半分以下になった。けれどこれと引き換えに「時間という資産」と「精神的な安定」を手に入れた。 

時の流れがグッと遅く感じるようになり、笑顔で過ごす時間が増えた。ウーバーの仕事のおかげで、僕はいつの間にか社会に奪われてしまった「人間らしさ(自分らしさ)」を取り戻せたような気がする。 

時間の融通がきくため海外渡航もしやすい。2024年はトルコへ一人旅をした。お金がなくても、閑散期を選べるので、旅費も安く済むのだ(筆者撮影) 

スキマバイトで稼ぐのは長期的に厳しいという声は多いようだが、「会社員の働き方を続けることは、それはそれで長期的に厳しいのではないか」……これが、僕の考えだ。 

働き方改革が声高に叫ばれる昨今だが、都心の一部の先進的な企業と、それ以外とでは、実情は異なるはずだ。地方にはまだまだブラック企業は残っているし、そういう会社で働けば、「自分を殺す」ことはなかなか避けられない。 

この行為を日本人はまるで美徳のように扱うが、見方を変えればただの自傷行為だ。知らず知らずのうち、心と体はボロボロになっていくだろう。「社会適合者」で居続けること、そして「会社適合者」で居続けることは、そんなに容易なことではないと僕は思うのだ。 

もちろん、会社員という生き方を否定するつもりもない。スキマバイトで生きるというのは、生活の保証もないということだ。不安定に暮らしている今だからこそ、毎月一定額の給与が振り込まれる会社員の生き方も、十二分に理解しているつもりだ。 

ただ、それでも、今は転職が当たり前の時代になっている。年齢が若い人であるほど、「今の仕事が自分に合っているのか」を悩んでいる人は少なくない。しかし、「そもそもフルタイムの会社員という働き方が自分に合っているのか」について考えている人は、ほとんど存在していないように感じる。 

お金と時間。正規雇用と非正規雇用……対極にある2つの要素をどう共存させるか。どうバランスを取るのか。 

要するに、大事なのは「アリかキリギリスか」ではなくて、「自分の中に、アリとキリギリスのバランスを持つ」ことなのだと思う。ありきたりな結論になってしまったけれど、スキマバイトを通じて僕は、このことを強く感じるようになった。 

令和の企業戦士の生存戦略として、本記事の内容をスキマ時間に少しでも考えていただけたら、筆者として最高の喜びである。

【もっと読む】「ウーバー配達員になれて良かった」と僕が思う訳 「負け組ランドセル」と嘲笑う人に伝えたい"本音" では、ウーバー配達員になったより詳しい経緯と、偽りない本音について、現役ウーバー配達員ライターの佐藤大輝氏が詳細に綴っている。
佐藤 大輝 ライター・ウーバー配達員

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さとう・だいき / Daiki Sato

23歳と29歳の時、所属していた企業(美容業・物流業)から解雇を通達され、訴訟を提起。それぞれの会社と約2年間裁判で争った経験を持つライター。ブラック企業問題を解決したいという願いから、裁判後はライターに転身。労働問題のほか、「再雇用戦士」「子供部屋おじさん」「インド駐在員」など、働き方や生き方に関する取材記事を執筆。趣味は海外旅行で、37カ国へ渡航。

X:@do69951367

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