フィリピン副大統領が下院で弾劾!失職の危機に  次期大統領選の有力候補、現職は妻との間で板挟み

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2025年1月30日、中部セブ市で開かれた全国弁護士大会で演壇に立ったマルコス氏は「弁護士を妻としたなら、けして口論してはならない」とあいさつし、笑いを誘った。

リザ氏は弁護士である。尻に敷かれていると公言しているようなものだが、聴衆も違和感なく受け止めているようだった。

他の有力候補もおらず…

サラ氏の人気が下降線をたどる一方で、他の有力な次期大統領候補がいまだ浮上しているわけでもない。弾劾を求める世論が盛り上がっているとも言えない。

エストラダ氏が弾劾訴追されたときには、辞任を求める群衆が街頭を埋め「ピープルパワー革命2」と呼ばれたが、2025年1月31日にマニラ首都圏で催されたサラ氏の弾劾を求める集会に集まったのは約1万人に過ぎなかった。

新興宗教団体イグレシア・ニ・クリストが弾劾反対の集会を1月に開催し全国で180万人を集めたが、これはむしろ「弾劾は必要ない」と発言したマルコス氏を支持し、団体の動員力を誇示するために催されたものだった。

上院で弾劾が成立するには、定数24の3分の2にあたる16人以上の賛成が必要だ。サラ氏は9人の反対者を確保すれば罷免を免れる。

マルコス氏は選挙戦初日の2月12日、地元北イロコス州で開いた集会で、陣営が推薦した候補者らとともに演壇に立ち「フィリピンを中国の一部にしたいと望んだ指導者の時代に戻りたいのか」と前政権の対中政策を批判した。さらに前政権の「麻薬撲滅戦争」で超法規的殺人が横行したことを引き合いに「われらが候補たちは血にまみれていない」と訴えた。

サラ氏支持を表明している議員は現在4人だが、うち3人は5月に改選される。選挙結果とその後の駆け引き、現政権による議員らへの圧力などが弾劾の成否を決めるだろう。ICCの捜査の行方もからんで政局はさらなるヒートアップが予想される。

上院で弾劾が可決される見通しになれば、サラ氏には辞任する道もある。辞任すれば他の刑事事件などで有罪判決を受けない限り、次期大統領選に立候補できるからだ。いずれにせよ揺れ動く政局の中心にサラ氏が座り続ける状況が当面続く。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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