では、消費者に勧める狙いとは何だろう。それはずばり、”お金という認識の変容”ではないか。
我々が財布から1万円札を出すときと、スマホ決済の残高で10000という数字を見たときでは、後者のほうが軽く感じはしないだろうか。お金である実感が乏しいと、人は気軽に使ってしまいがちだ。手元にお金がなくてもモノが買えるクレジットカードなら、いっそう消費ハードルが下がる。
使えば使うほどポイントやマイルがたまってオトクです、高還元率のキャンペーン中ですとアピールされ、スマホには本人の属性や消費履歴に基づいたクーポンやセールのお知らせがひっきりなしに届くのだ。内需を盛り上げ、日本経済をより滑らかに回すには、キャッシュレスのほうが都合がいいという側面があるに違いない。
クレカとQRコード決済の陣地争い
7年前と比べると、決済に使うキャッシュレス手段にも変化があった。2018年にはクレジットカードが9割を占め、その次が電子マネー(Suicaなど交通系や、nanacoや楽天Edy、WAON等の流通系)が7.5%だ。クレジットカードは高額決済に使われるという性質もあり、2023年でも1位は揺るがない。ただし、7年前と比べて年々存在感を増しているのがコード決済だ。その伸びは電子マネーを追い越し、2023年で8.6%となり、まもなく1割に届くだろう。2025年にはすでに超えているのではないか。
QRコードの伸びと反比例するように、クレジットカードのシェアは下降気味だ。2019年には90%を切り、2023年には83.5%となった。8割台をキープし続けられるかが正念場だろう。しかし、そこにはある理由が関係している。
これまでクレジットカードは高単価の決済用、コード決済は少額決済だが高頻度で使われるという傾向があった。決済サービス等を手掛けるフィンテック企業インフキュリオンの調べによると、昨今ではレストランや家電量販店などの高単価業種でもコード決済で支払うケースが増加しているという。昨年PayPayは1回あたりの決済上限額を100万円まで引き上げた。確かに高額支払いにも対応可能な手段になっている。
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