東京都は助成金11億「無痛分娩」普及を妨げる"壁" 全国の実施率は1割、乗り越えるべき課題とは?

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話を東京都の助成金に戻す。

東京都も医療体制には注意を払っている。それは、今回の新事業が費用の助成だけではなく、医療者の研修や地域連携にも計0.5億円の予算が配分されたことでもうかがわれる。

また、都は助成制度に施設要件を入れ、対象機関で無痛分娩をした都民に助成するという。

しかしそれだけでなく、助成制度が始まったら、東京都は責任をもって無痛分娩施設の実態調査を実施しながら、注意深く制度を運営していくべきだ。無痛分娩の希望者は増加するだろう。そうすると、要件を満たした医療施設に分娩が集中する心配もある。スタッフに過度の負担がかかることも考えられる。

麻酔科医が常駐するなど体制が整った病院は、NICU(新生児集中治療室)もある拠点病院が多い。緊急搬送や、ハイリスク妊娠の母体や新生児の命を守る場であることを忘れてはならない。

麻酔科医不足への対策も必要だろう。これに対しては、国レベルの対策が求められる。

麻酔科医の藤野裕士医師(大阪市立豊中病院総長)は、「麻酔科医の病院勤務は、夜間の緊急手術に対応するケースも多く、若手に敬遠されている」と言う。麻酔科医になっても勤務時間を選べるフリーランス医師になる医師が多く、ますます常勤の麻酔科医が減っているという。

無痛分娩は支援の1つ

2023年の東京都の出生数は 8万6348 人。前年より5.2%減少し、減り具合が加速している。

少子化対策は、さまざまなニーズに応える数多くの政策が必要である。その1つとして陣痛への恐怖という、これまであまり数値化されず、行政が注目しなかったものに着眼したことは、筆者は評価している。

筆者のところには「どんな出産方法があるのか情報が入りにくい」という声もよく届く。そうした多様なニーズへの対応も含めて、安全な出産支援を打ち出してほしい。

河合 蘭 出産ジャーナリスト

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かわい らん / Ran Kawai

出産ジャーナリスト。1959年東京都生まれ。カメラマンとして活動後、1986年より出産に関する執筆活動を開始。東京医科歯科大学、聖路加国際大学大学院等の非常勤講師も務める。著書に『未妊―「産む」と決められない』(NHK出版)、『卵子老化の真実』(文春新書)など多数。2016年『出生前診断』(朝日新書)で科学ジャーナリスト賞受賞。

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