東京都は助成金11億「無痛分娩」普及を妨げる"壁" 全国の実施率は1割、乗り越えるべき課題とは?

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計画分娩は産む日が決められるので予定が立ちやすく、「夫が仕事を休みやすい」と前向きに捉える妊婦もいる。 しかし、計画分娩でも本当にその日に生まれるかどうかはわからない。

薬を入れれば子宮は収縮するが、薬の効き方は個人差が大きく、その差を客観的に示す指標もない。だから、薬が分娩に必要な本格的な陣痛「有効陣痛」に発展するとは限らない。

閉じた子宮口を開く処置も行われるが効果は限定的で、結局、そうした外部の刺激がうまく本当の陣痛を誘い出せないことには、お産にならない。

子宮は収縮しているのに生まれない日が2日以上にわたることもある。医療者たちが「人工難産」(医療処置が原因で起きる難産)と呼ぶ状態で、妊婦が疲労してしまう。

都内で2人を出産した女性Bさんは、1人目は「夫の有休がとりやすいし、痛みは避けたい」と計画無痛分娩をした。だが、陣痛が進まなかったため、3日がかりの出産になった。Bさんは2人目は計画分娩も無痛分娩も選ばなかった。

こうした例以外にも、入院する前に自然な陣痛が来たため、麻酔科医が対応できず、無痛分娩ができない人もいる。

では、麻酔科医が多数いる大学病院や総合病院では問題がないかというと、そうとは限らない。緊急患者や手術件数が多すぎて麻酔科医が不足していることが多く、院内に麻酔科医がいても対応できないことがあるからだ。

記事のはじめで大学病院の無痛分娩経験を紹介した女性Aさんも、2人目の出産とき、別に緊急手術が入ったため麻酔科医の手があかず、なかなか麻酔を入れてもらえなかったという経験をした。

無痛分娩と帝王切開の関係

無痛分娩は陣痛微弱になりやすく、さまざまな医療介入が増えるという報告が少なくない。そこに計画分娩が加わると、帝王切開率が増えるというデータもある。

前出の木村医師が、以前勤務していた大阪大学医学部附属病院の産婦人科で3年間のデータを分析したところ、経腟分娩予定の妊婦のうち、計画分娩も無痛分娩もないグループの帝王切開率は3%だった。ところが、計画分娩グループは11%、計画分娩による無痛分娩グループは18%だった。

同院は帝王切開を減らすため、必死の努力を重ねた。木村医師は言う。

「日本のように計画分娩とセットで行うのが当たり前という国は、世界にほとんどありません。それなのに日本は今、それを気にもせず、無痛分娩を美化している気がします。私も無痛分娩をしたいという女性の希望はかなえてほしいですが、日本は特殊な形でやっているということを理解していただく必要はあります」

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