「バーチャル世界」で希望格差を埋める若者たち 「努力が報われない仕事」が早々に見切られる訳

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現実にしている仕事で努力が報われないと感じ、さらに、努力しても将来就きたいと思う仕事(専業主婦も含む)に就けないと思う人たちの行き場が、バーチャルな世界である。リアルな仕事とは別の所で、努力が報われる場を「疑似仕事」と呼んでおく。

疑似仕事で格差を埋め合わせる

疑似仕事には、様々なものがある。その代表例は「パチンコ」である。もちろん、パチンコは換金ができるということで現実世界と多少つながりはあるが、一部のプロを除けば、基本は、経済的には「消費活動」に位置づけられる。しかし、客観的にみれば消費であるが、彼らにとっては一種の仕事的な意味を持つ。それは、その世界で「努力すれば報われる」と思うことができるからである。

同じことが、様々な形のゲームの世界で見られることである。今の若い人は、パチンコよりもネットゲームの世界にのめり込む人が多いという印象である。50年前であれば、喫茶店のインベーダーゲームやリアルに人と対戦する麻雀だろう。ゲームセンターはそろそろ衰退気味で、今では、個人所有のゲーム機、パソコン、スマホなどに中心が移っている。

その中身は「ドラゴンクエスト」が典型だが、基本は、様々な課題を乗り越えて、努力して技術を磨けば、結果が得られるということである。ソーシャル・ゲームでは、参加している人同士で助け合いながら、課題を達成することもできる。これらは、「疑似成功体験」つまり「努力が報われるという感情」を売るシステムといってよいのではないか。

もちろん、リアルな場で成功体験を感じることが可能な人であっても、時々、バーチャルな世界で疑似成功体験を感じたいということはある。しかし、現実に仕事で成功体験が感じられない人にとっては、バーチャルな体験のみが、希望の場となるのだ。

15年以上前、私の大学のゼミ生が「ゲームセンターに集まる人」を調査して卒論を書いたことがある。その中で「仕事なんてつまらない、ゲーセンに来れば、仲間がいて、高得点を出せばみんながほめてくれる」という語りが典型としてあったのが、印象的である。

彼らにとって、現実の仕事は、ゲームの世界に浸るためのお金を稼ぐためだけの単なる手段。だから、単純でつまらなくても耐えられる。努力が報われるという生きがいは、ゲームの世界の方にある。

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