自分より「推し」の成功を望む若者たちのリアル 「世界一幸せな衰退国」日本の歪んだ幸福感

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
希望格差社会、それから
「格差が努力で乗り越えられる」という物語は、ますます現実味を失っている(写真:bee/PIXTA)
希望格差が拡大した令和社会において、自分の成功より「推し」の成功を望む若者が急増しているという。その背景には何があるのか。「パラサイト・シングル」や「婚活」などの言葉を世に出し、近著『希望格差社会、それから』を上梓した山田昌弘氏が解説する。

平成時代を総括すると、「停滞した豊かな社会」ということができる。昭和ではあたりまえに実現できていた、男性は仕事で努力すれば評価され、男女とも結婚して子どもを持ち豊かな生活を築くという、将来への希望が持てない人たちが増えていく。平成はそのような時代であった。

「自分では無理」と思う人々

希望格差社会、それから: 幸福に衰退する国の20年
『希望格差社会、それから: 幸福に衰退する国の20年』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

そして、令和になると、希望格差が固定化する傾向が強まっている。現実では努力しても、世代内でも(その人の人生の中でも)、世代間でも(子どもの世代になっても)、報われないと思う人々が増え、なかなか将来への希望が持てなくなっている。

一部の者は、停滞する中でも、自分が思い描く夢を実現していくことはできる。しかし、それは、能力が特段秀でていたり、親に恵まれていたりするなど、限られた人々になりつつある。少なくとも、多くの人は、「自分では無理」と思うようになっている。

テレビなどマスコミが、「貧しい親の元に生まれたけれど、努力して成功し豊かになった」人の実例を取り上げて宣伝することは、いまだに行われている。もちろん、今でもそのようなケースはあるだろう。

次ページ成功者は「別世界」の人
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事