「バーチャル世界」で希望格差を埋める若者たち 「努力が報われない仕事」が早々に見切られる訳

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しかし、1990年代以降、すべての男性が正規雇用で、将来に希望が持てる職業に就けるわけではなくなった。仕事で努力し、それが報われることが感じられない職に就かざるを得ない人が増大する。また、正規雇用者であっても、ブラック企業の社員や業績の上がらない中小企業従業員などは、努力に見合った評価や収入が得られるとは思われない状況が広がる。

そのような中、平成時代に出現したのが、「夢見るフリーター」という存在である。「フリーター」という言葉は、バブル経済まっさかりの1990年頃、株式会社リクルートによって広められた言葉である。フリーという英語と、アルバイトというドイツ語を組み合わせた和製外国語である。

当時は、「将来、やりたいことを仕事にするために定職に就くことはせず、アルバイトを転々とする若者」というイメージで語られていた。私が2000年頃に調査した非正規雇用者の中にも、そのような意識を持つ若者はある程度存在した。

2種類の「リアルな仕事」

これを仕事と希望という観点からみると、リアルな仕事の世界を2つに分裂させ、1つは「努力が報われて欲しい仕事の世界」、もう1つは「努力が報われない仕事の世界」になる。

声優やロックスター、プロ野球選手になるため、努力をする。しかし、それでは生活できないので、成功するまで生活費を稼ぐためにアルバイトする。夢見るフリーターたちは、前者の「なりたい職業」の夢の世界で、努力が報われて欲しいと希望を持ち練習に励む。後者の現実にお金を稼ぐアルバイトの世界では、努力が報われないものと割り切っている。

また、女性にとってみれば、「専業主婦になる」という意味での婚活(もしくは、待っているだけの人も含めて)も同様であろう。収入の高い人と結婚して、「家事・育児」をしていれば生活が豊かになるという専業主婦という「地位」を目指す。

一方で、現実の仕事はアルバイトや一般職で、昇進や昇給はほとんどない。将来、家事や育児をしてその努力が報われるということを信じて、リアルには努力が報われない仕事を続けるという姿がみられたのである。

これらのケースを反転させれば、現実には努力が報われない仕事で生活をしているが、それを埋め合わせるために、「なりたいもの」の世界で、今、現実にしている努力が実って成功するという将来の夢を見るのである。

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